黒木陽子の「私はこんな海外ドラマを見てきた」
vol.48  服を自分で作るということ


今回は、ドラマではなくてこれ!

写真1

『ソーイング・ビー』(BBC Two 2013- イギリス)
イギリス中の素人裁縫自慢が集まって、毎回出される課題をこなし競っていく。毎回誰かが落とされていって、最後に残るアマチュア裁縫自慢は誰だ!

サバイバルバトルもの…となると、いがみ合いや喧嘩、生地の取り合いやらがあると思いきや…
ただただ裁縫の腕を競う(時間内に仕上げるのに必死でそれどころじゃないというのもあるけど)、終わった後に出演者同士仲良くお茶を飲んで談笑している姿が見られる、安心して見られる番組です。

いや。安心はしないか。

とにかくみなさんアマチュアなので
「中世のコスプレ衣装は今までたくさん塗ってきたけど…ファスナーなんかつけたことないよ!(中世に無いから)」という人、
「スカートは初めて作るな…」という人。
「私はこの作り方は嫌いだからこうやって作るわ!」という人までおりまして。

劇団の衣装担当・裁縫は好きだけれど、技術は無い私はめちゃくちゃ共感してハラハラします。(いや、出演者の人たちの方が数倍うまいのですが)

「袖がかたいっぽ無い!」とか、「生地が足りない!」とか、「時間が足りない!裾の始末、本当は手縫いでしたいけど…ミシンで縫います!」とか。
「お裁縫は日曜の昼下がりにのんびりやるものでしょ!(半ギレ)」とか。

ああ…わかる、わかるよ〜こっちまで肩が凝ってくるよ〜(いや、出演者の人たちの方が数倍…)

ほんでもって、審査員がビシバシなのです…
「裾のラインが曲がってる」
「ここの縫い目が揃ってない」
ダメ出しの嵐。
そ、そんな…そこまで言わんでも…私に比べたら縫い目めっちゃ揃ってるよ!

でも、それもきっと、参加者がアマチュアで「もっと裁縫が上手くなりたい!」と思っているからこその「プロの目線から見て『ここが足りないよ』」の指摘なんですよね。

写真2

シーズン2まで見た私のお気に入りはシーズン1のアンさん。
80代の女性で「服は生地を買って作るもの」だった時代からずっと家族や周りの人に服を作ってきたんだろうなあ…という経験の厚みがすごいです。喜ぶ時の顔が本当に素敵だし、時々茶目っ気を見せるのが本当にキュートです。あんな風に年を重ねたいものだよ…。

あとですね、イギリスの服飾の歴史ミニコーナーがあったりして、それも楽しいのです。第二次大戦後、軍の地図として使われていた絹の生地が大量に市民に売り出されて、みんなその柄の洋服を着ていた。とか。ほーっ!へーっ!の嵐。

衣食住、のうち真っ先にアウトソーシングされた「衣」ですが、一生懸命お裁縫して生地が服になっていく姿を見ていると、「自分でも服作ってみたいな…」という気持ちになりますよ!

オススメです。