黒木陽子の「私はこんな海外ドラマを見てきた」
vol.25 身につまされるだけが人生か

『シリコンバレー』
シリコンバレーのあんまりいけてないプログラマーが、そうとは知らず金になるアルゴリズムを実装したアプリを作る。勤め先である巨大なIT企業にそのプログラムを大金で売って億万長者になるか、それともお金を出してくれるという投資会社から資金を得て起業するか?という選択から、物語がスタート。もちろんドラマなもんで新しい会社を立ち上げる方を選んだ主人公と仲間たちは、ライバル大企業やお金や妬みやら資本金や特許やお金や裁判やらの大波はげしいIT業界で頑張っていこうとするのだった。
(2014年〜アメリカHBO)

いま、私のイチオシです。

なんと言いますのか、もう、私も自分を見つめ過ぎるほど見つめすぎた年齢になって来たもんで「若いエネルギーで頑張っちゃったら、えらい会長とかに認められて、やっぱり伝わるのは誠意だよね!」というドラマは、ちょっともう辛いのです。
それよりも、お金や人間関係、お金・・・。「ああ。夢だけじゃ食べていけまへんがな」そんな身につまされるようなものの方がホッとするんです。しかし、身につまされるけど「夢がなければ光はない」というのがちょっと感じられるような。ちょっとご都合が良い身につまされるものがいいんです。(13回でご紹介した『グッド・ワイフ』も、そうでした。)

「あ〜お金ってヒリヒリするぅ〜」

しかもドラマなのが良い。
映画だと2時間の尺に金銭面の危機が多くて2発くらいしか来ませんし、勇気やガッツで乗り切って、あとはめでたしめでたし、となるわけですが。こっちは連続ドラマ。金銭面の危機が次々と訪れ、毎回「ああもうだめだ、会社が潰れる・・・」ってなるという。
さらに、金銭面だけでなくて、色々としょっぱい人間関係の危機とか作った製品の一般層と専門家との評価の乖離、とか。
本当に、身につまされるんですけれども。
でも、根底に友情だとか、夢だとか、ものづくり(って言わないんですかね、プログラムは)への愛情なんかが、1シーズンに1回か2回くらい、たま〜に危機を救ってくれるようになっていて、それが良いんですよ。

あと、主人公のパッション温度が低いのがいい。

海外ドラマを敬遠される方には、アメリカのドラマって「ハ〜イ!マイク!」「オッケー!今日もジェットコースターだぜ!」という肉食系ばかり出てくるドラマか、「パパ、ごめんなさい」「いいのさ、リサ、パパが間違ってたんだ。愛してる」「知ってるわ」「ハハハハハ」というファミリー命ドラマばっかり。ジャパニーズ文化圏で育ったもんで・・・ちょっとねー。という方が多いのかもしれない。(知らんけど)

今回の『シリコンバレー』は、そんな、「アメリカ文化なじまへんわ〜」と敬遠している人に是非見て欲しい。

Appleとか、Googleとか、キラキラしたCEOがろくろを回しながらキラキラした未来を話す・・・
「かっこいい。素敵や」て思うのと「ちょっと胡散臭い」って思っているのが半々。でもまあ、そんな風には所詮なれませんしね。ヘッヘヘッヘへへッへへ
そんな主人公が、胃を痛めながら起業していく姿は、ほんまに応援したくなるはずです!

(注)ドラマの中に「アルゴリズム」「ベンチャーキャピタル」「コーディング」いろいろIT業界用語がいっぱい出て来て知ったようになってこの文章でも使っていますが、本当のところはよくわかっていません。アルゴリズムとプログラムの違いってなんだ?