黒木陽子の「私はこんな海外ドラマを見てきた」 vol.6 海外ドラマ大好き人間!略して「海どん」が、彗星小学校のみんなにオススメの海外ドラマを押し付けていくよ! vol.6 なぜ戦うのか2 <これまでのお話> 総合学習の時間に平和学習を演劇で行うことになった彗星小学校のみんな。生ぬるい演技に対して海どんから怒りを込めて『バンド・オブ・ブラザーズ』を渡されたが・・・。 ーーー 博貴先生、演技指導に熱が入る。 博貴「そんな生ぬるい根性で敵が倒せると思ってるのか!」 子どもたち「ノー!サー!」 博貴「強いのは、俺たちだ!」 子どもたち「イエッサー!」 博貴「ヤンキーを殺せ!」 子どもたち「イエッサー!」 そこへ、海どん、登場。 海どん「なんだい、これは?」 博貴「海どんさん!どうです?いただいたDVDを参考にしてですね、日本軍がどうやったら勝てたのかをシミュレーションしまして、兵士たちの極限状態の中での絆を・・」 海どん「ばかやろーっ!!」 静まり返る教室 海どん「それで平和学習だなんて言えるのか!」 海どん、大きな音をたてて扉を閉めて出ていってしまう。 博貴「待って、待ってください、海どんさん・・・は!これは・・・」 博貴先生、廊下におちていたDVDセットを拾う。 ーーー ふたたび平和教育の劇を作っている最中に、怒り出してしまった海どん。 海どんがこれみよがしに置いていった海外ドラマ、いったいなんだったのかな・・? それは・・・これ! ![]() 『ザ・パシフィック』だ! 前回の『バンド・オブ・ブラザーズ』と同じ製作陣(スピルバーグとかトムハンクス)が10年後に作った太平洋戦争を題材にしたこのドラマ。 時は第二次世界大戦。邪悪なる日本帝国軍を打ち砕くべく、海兵隊員たちが立ち上がったぜ!ヨーロッパ戦線は友軍に任せときな。俺たちは太平洋で戦うんだぜ!というドラマなんですが・・・『バンド・オブ・ブラザーズ』のような爽快感を求めて見たら大火傷しますよ。 とにかく、爽快感が、ない・・・・。 「こういう戦術でこうしたらこうなって・・・美しかった街並みも今や廃墟に・・市民の人たちとの交流もあって・・ヨーロッパの美しい部屋が作戦本部で・・」 そんなのが、無いのです。基本、戦闘シーンは南の島々のジャングル。 いつ来るかわからない攻撃、降り続く雨、どろどろのベタベタ。 なんせ戦術が見えないのです。 いち兵隊の視線で描かれているので、わあわあ泥だらけの中で戦っていたら、気づけば作戦が終わっている。 ここの砦とここの砦を落として・・・そしたら次はここで・・というのが無い。 戦闘の結果は最後にテロップで出るだけ。 そして、何より相手が日本人なのです。1話で日本兵が一人で立ち向かってきて「撃てよ!」という場面があるのですが、もう、なんとも言えません。もしかすると、あれは、誰かのおじいさん・ひいおじいさんだったのかもしれないと思うと、涙があふれて・・・。 わたし、数年前に見たのですが、気が重くて見返すのが辛くてですね・・・。 ぜんぜんエンターテイメントではないのです。 でも、見た方がいいと思います。 アメリカ側の視点で描かれた太平洋戦争、つまりは「大義のある」戦争、「勝った」戦争をここまで爽快感なく描くことに、時代を感じます。(ベトナム戦争ものはそういうふうに描かれていますが「勝った戦争」で、こんな風なのはあまり多くなかったのではないかな) 勝つ戦争もつらいよなあー。 太平洋戦争もののゲームはあるみたいなのですが、それはどうなんでしょう・・・ゲームは死んでもやり直せるからなあ・・。一度死んだら二度とゲームができない・新しく買い直さなければならない、というのでしたら「ああ・・・つらい・・・」と思えるのかもしれませんが。 (ああ、勘違いして欲しくないのですが、だから戦争もののゲームはダメだ!と、言っているわけではないのです。ゲームはゲームとして楽しんだらええと思うのです) そんなこんなで、彗星小学校のみんな、平和学習をするならば『バンド・オブ・ブラザーズ』と『ザ・パシフィック』、両方見てね! |
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