あたらしい行事

黒木陽子の『あたらしい行事』0月編(準備編)

○あたらしい行事を考えます!

あけましておめでとうございます。お正月休み、みなさんはどのように過ごされたでしょうか。
私はツイッターを眺めながら紅白を見、今年こそは毎日日記を書くと決意をし、人気の無いお寺でゆっくりと初詣、ドラクエをやり・・と絵に描いたような「わたしの正月スタイル」を楽しんでおりました。

お正月、大好きだ!

そしてよくよく考えると、節分も好きだし、ひな祭りも、子どもの日も、七夕も、クリスマスも好きなのです。特別な料理、独特の飾り付け、珍妙な儀式、謎の聖人に架空の存在・・・「今日は〇〇の日だからね・・」という母親の「仕掛けてやったった」感。
そう、私は「行事」が好きなのです!
なにより行事って、ゆるいのがいい。積極的に参加してもしなくても社会生活に何の問題もおこさないし。(ちなみに私は行事が好きなだけで特に頑張ることはないですごめんなさい。)そして伝統が重んじられそうな分野なくせに新規参入がけっこうあるのが面白い。皆さんの記憶に新しいのはハロウィンかもしれませんが、「恵方巻き」や「バレンタインのチョコ」、さらにさかのぼると「年賀状ハガキ」だってそうなのです。この節操なさ!素晴らしいじゃないですか。

そんなわけで「私だって!」の精神で、私なりにあたらしい行事を創作していこうではないかと思います!


○フォーマット

さて。あたらしい行事を考えるにあたり、ノープランで挑む訳にはまいりません。慎重なマーケティングとやらを行わないと行事として定着する可能性は低くなります(定着させる気なのか!!)。「サン・ジョルディの日」の二の舞になってしまうことでしょう。
まずは行事を構成する要素を抽出して、それに沿って創作するのです。いつになく計画的。


↑いろんな行事を書いてみて特徴的なことを書き出してみた


行事を構成する要素は・・
1)料理 … これは言わずもがな。料理なくして行事無し。食材でもいい。卵とかかぼちゃとか。
2)装飾 … お正月だったら鏡餅。お盆だったらなすび人形。お月見はススキ。これもかかせないな。特定の色(クリスマスカラーとか)がある行事も。
3)アクティビティ … いきなりカタカナ語かよ!ハロウィンだったら仮装して近所を回って「トリックオアトリート」と言ってお菓子をもらったりするやつ。節分は豆まき。恵方巻きのように料理と結びつくものも。
4)プレゼント … バレンタインとかはプレゼントメインですね。お年玉もこれか。
5)歌 … Wikipedia見てみたらサン・ジョルディの日イメージソングが大量に作られているぞ・・。
6)ファンタジー … サンタ。そう書くと荒っぽいけれども、七夕の織り姫彦星とかもそうかな。

以上、六つ。
特に1)〜3)は欠かせないと見ました。ハロウィンは1)〜3)そろっていて、3)の「仮装」が大ブレイクしたわけですが、かぼちゃや黄色と紫の装飾が無ければ、ただのコスプレ大会になってしまって行事には昇格しなかったと思います。本を贈りあう「サン・ジョルディの日」も本を読みながら何か食べたり飲んだりしていたら今頃は・・・(「もの食べながら本を読むな!」と本好きには怒られそう。そういうガチなところが定着しなかった理由なんじゃないの)。
また、季節感も大切にしなければなりません。お正月になすびやきゅうりの夏野菜を使った精霊馬は難しいです。しかし季節に逆らうことも時には大事。豆まきは厳寒期にするからこそ行事感が高まるというものです。

これで準備は完璧。あとは月ごとにミカンだとか紅茶だとかを考えていけばあとは自動的に決まるようなもの。いよいよ来月から新連載、黒木陽子のあたらしいーーー


○行事の心

「ちょっと待ったー!!」
「え?」
「陽子さん、行事の心、忘れてない?」
「行事の・・・心?」

そう。大切なことを忘れていませんか。心がない行事なんて、医療成分の配合されていない入浴剤のようなもの。風呂水がちょっと色づいて華やかな気持ちになるだけ。


↑さっきの画像下部分を拡大。

そう、スピリット、行事の精神です。そもそも行事とは未来の何かを願ったり、過去の誰かを思ったり、現在のあれこれを祝ったりするものであるはずなのです。
もちろん、行事として浸透すればするほど、そもそもの意味を意識する人は少なくなっていきますし、それが行事のいいところ(ゆるさ)にも繋がっていると思うので否定はしません。でも、その精神がなければ、行事ではないのです。ハロウィンなんて、扮装をして町を練り歩くただのホラーコスプレ大会になってしまう。「ケルト人の年末が10月31日で一年のおわりに悪い精霊や魔女を追い払うため・・」という由来があるからこそ、行事としての格付けされ、いい大人が胸を張って加担・参加できるのです。

逆にいうと、良い大人が胸を張って受け入れられる保守的な精神にのっとるものほど、行事として採用されやすいということかもしれません。革新的な精神、「単身世帯者がこのまま楽しく健康で幸せに生きて行けるようにという願いを込めて」とかじゃダメなのです。(私としては是非あたらしい行事に加えたいところではありますが!)

・子供の成長を祝ったり、みんなの健康を願う
・自然の恵みに感謝する、災いがこないよう祈る
・ご先祖さまやお世話になった人、歴史に感謝する

これならだれも文句言わないだろう、という精神が必要です。そこがコンサバであればあるほど、珍妙なアクティビティが許されて、光ってくるような気がします。(おせちのごまめとか)


○次回2月編から!

以上のことをふまえて、次回よりあたらしい行事を考えていきたいと思います。
・・・そういえば、私、ここでいう「行事」って「年間行事」に限ってますね。還暦のお祝いとか、元服とかそういうのは入れてない・・・(そういうのって行事って言うんか?)。まあいいや。この連載では基本「毎年きまった季節におこなうもの」限定にします!

では、次回より。2月のあたらしい行事をご紹介しますのでお楽しみに!