IWATOYAMAラストウィーク

「岩戸山のコックピット」いよいよ最終週に突入!
コンシェルジュが10月21日〜27日のみどころをファッション雑誌風にご案内します。

10月7日に開幕した可搬型劇場“コックピット”内舞台芸術祭「岩戸山のコックピット」会期も半分を越えた。
ラストウィークの内容も、京都外の団体、ワークショップ、トーク企画そして劇団衛星のコックピット連続上演と盛りだくさんだ。
超具象舞台“コックピット”。企画ごとに異なるコックピットの顔を観る為には、複数作品・企画をまたがって観るのがマスト!
さあ、コックピット・ラストウィークに乗り込もう。


京都外の3団体。

まず気になるのはラストウィークのトップを飾る集団:歩行訓練。山口県に活動拠点を持つ彼らだが、えだみつ演劇フェスティバル、F/T(フェスティバルトーキョー)に作品を出品する等、その活動は意欲的だ。また、団体オリジナル作品の多いコックピットの中で、サミュエル・ベケットの『勝負の終わり』に挑戦する。代表の谷はコックピット経験者*であるだけにその意欲に注目だ。

大阪からはかのうとおっさんともにょ企画が搭乗。両方gateにて(筆者から)高い評価を得た団体である。
ともにょ企画、前回gateでKAIKAの床板を腐らせるか?と思わせるほどの発汗量を奮った彼らのパフォーマンスであるが、コックピットの狭さをどう活かすのか。ファーストウィーク(10月7日〜13日)の上演では「ぶつかり合いがすごかった」という感想がネット上に上がっていたのを目にし、コックピットの壁が修復不可能な程、破壊されないのか個人的に恐ろしいものを感じている。一方、かのうとおっさんだが、たまごかけ寄席でゾクゾクするような噺を披露した桐山氏、ベビー・ピーから松田氏、そして京都ロマンポップから向坂氏が出演するという最新情報に嬉しい驚きを隠せない。次回11月公演『ボンジュールニッポン』に筆者はユニット美人としてゲスト出演する。そういう大人の事情も含めて考えられるドラマニスタは必見である。もちろん、男女脱力系コント師としての大阪での高いバリューが京都でどう通用するのかも。


最終ワークショップは最強就活?

期間内に様々なワークショップを開催してきた岩戸山のコックピットだが、最終週ももちろんワークショップ企画が用意されてある。就活生のためのお笑い演劇ワークショップは、黒木陽子が就職活動未経験の経験を活かしておこなう模擬面接ワークショップだ。大阪大学コミュニケーションデザイン・センターが提供するワークショップデザイナー育成プログラムを半年間履修し得たメソッドを元に適当に作成されたプログラム。他プログラムのチケットがあれば無料で受講できるというリーズナブルさも魅力。「お金を出して就活のまねごとなんてまっぴらだ」というドラマニスタにオススメしたい。そして、今現在就職活動をしなくてもいい悦びや、今現在就職活動しなければならない苦さ、人生の苦楽がコックピットいっぱいにあふれ出すはずだ。


カンパニーのヒストリーを愛でる。

そしてIWATOYAMAラストウィークのラストを締めるのが、劇団衛星のコックピットコンセプト1〜4の4作品だ。それぞれのコンセプトは各所で紹介されているので割愛するとして、ここでは各コンセプトが劇団衛星という演劇カンパニーの歴史とともにあるという点に着目してみよう。
コンセプト1。言わずと知れたコックピットシリーズの嚆矢となる作品であり、劇団衛星20年のヒストリーの中で前半10年期と後半10年をつなぐ重要な作品であるといえるだろう。この作品上演後に劇団員の半分が劇団を去る。そして、この後に衛星は新作偏重主義を捨て『珠光の庵』や『大陪審』といったレパートリー作品を産み出していくことになるのである。

その次の年に作成されたコンセプト2。初演初日が筆者の大学卒業のかかった中国語の試験日と重なりテスト用紙の裏側に「今度中国が舞台のお芝居をします。私が中国語を習った7年間の間で中国経済は大きく成長し・・・」とヤケクソで書いたのはいい思い出だ。そんな個人的なメモリアルは別にして、まだ混乱期の劇団の状況をよく表す、混沌とした作品といえるだろう。そして、中国と日本の関係もこの9年でさらに大きく変化し、ただただ混沌とちりばめられたピースのいくつかが、社会状況の変化によりアイロニーを含む大きな毒に変化するという「芸術と社会の関係性を試す作品」だ。

コンセプト3はそれから半年後に上演された作品であるが、今回一番大きく改変された。主に関係者から劇団主宰者のあり方を大きく問われることになった問題作だが、その姿勢が2013年の今の演劇界の中でどう再評価されるのか、劇団員として気になるところである。また、この作品の作成後に結成されたのがユニット美人であり、「自分たちのやりたいことを臆面もなくやろう!」というユニット美人の姿勢に大きな影響を与えていることは疑いようがない。(今回コンセプト3上演後に、ユニット美人のおまけコントあり)

そして、初演から10年。新作のコンセプト4である。コンセプト1の物語をベースに子ども向けに作られたこの作品は、この10年の間に代表蓮行が子どもを持ったこと、そして劇団員が子ども向けの演劇ワークショップに携わるようになったことと、無関係には考えられない。小学生3〜4年生に向けて作ったとのことであるが対象年齢は幅広い。未就学児童であれば膝の上での観劇可能だし、大人が観ても十分楽しめる内容になっている。ひょっとするとコンセプト1よりシンプルで素直に楽しめる作品になっているかもしれない。

来年、20周年をむかえる劇団衛星が取り組んできた『コックピット』。経済活動も芸術活動の一部と捉えて活動を行ってきたこのカンパニーが、全員プロ化を実現した時期とちょうど重なる『コックピット』。あんなこと、こんなこと、いろいろあったね『コックピット』。『コックピット』という言葉自体が『何か辛いモノ・避けるべき符丁』としてメンバーの心身に刻まれていることは間違いないが、それを外から眺めるのはきっと、おそらく、痛快なのではないだろうか。そして、それが外の人の特権であることも間違いないだろう。是非、外から眺めてほしい。筆者を初め関係者はどうあがいても外から眺めることは不可能なのだから。

さあ、コックピットに乗り込もう。