『あなたの知らない三国志の世界』
第十六回「ユニット美人の三国志とはいったい何だったのか7」


 2012年の5月〜11月にかけて半年かけてやったユニット美人の三国志vol.0〜4。

 この連載では、せっかく半年かけて作ったんだからそのままにしておくのはもったいない。という省エネ精神から、作品について語っていこうと思います。自分で自分の作品解説なんて、どうなんだい、それなら芝居にするなよ…というようなことを書いていきますので、そういうのが嫌な人は読まない方が良いがと思います。というところで、ずっと年数を間違えていたことに気がつきました。創作・上演したのは2012年の5月〜11月です。2013年じゃありません。あー、もう一年経ってしまった。早いなあ。

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その7:あの壁を壊すのはあなた4
○止まらない世界
 そうして、なんだかんだあって赤壁の戦いは勃発。歴史のとおり、粥見たち呉の孫権ファミリー・劉備連合軍は勝利をおさめます。しかし、戦いには勝ちますが、普通の人リンちゃんは死んでしまいます。普通の人なんだから仕方ない。いくら自分の所属チームが勝利をおさめたとしても、普通の兵士は死ぬのです。続けざまにアイドル提督周瑜も死んでしまいます(本当はちょっと間があるけれども)。
 スポンサーであり今や政治家でもある魯粛は、軍人周瑜の死を気にしません。商売人にとって、軍人も替えのきく存在。また新たなカリスマ軍人を立てれば戦争の継続は可能です。赤壁では勝利したものの、領土が広がったわけではないので、今のままだと、魯粛は出資した分を取り返すことができません。もっともっと戦争を続けてもらわなければ困るのです。

 一方粥見はどうでしょうか。
 「どうでしょうか」と言われたところで「知ったことじゃねえ〜」ですよね。・・・そりゃそうだ。はっはっは。

 さて。はい。そうですね。
 現代女性の粥見は、リンちゃんの死と周瑜の死に耐えることができません。さらに、二話で見捨てた呂布のことまで思い出してしまいます。そりゃそうだ。だって粥見は現代女性だもの。友達が目の前で見捨てて死んで、小さい子からの知り合いも死に、参謀として潜り込んだ相手も死んだら、そりゃトラウマです。普通の神経なら持ちませんよね。
 そして、ほとほとこの『三国志』の世界も嫌になり、まんまと孔明の用意した罠「元の世界っぽい世界」に逃げ込むことになってしまいます。
 複雑な人生も嫌だし、かといって仕事のギスギスした勝った負けたの世界も耐えられない!なんとなくぬるい笑いのある循環の世界で生きていきたい!という訳ですね。

 孔明「消費税分くらいは誰かの役に立つでしょうよ」

 ああ。いいセリフだ。自分で書いて言うのもなんだけれども。
 税金をたっぷりおさめることもできない、子どももいない、ボランティア活動や地域に貢献できる活動をしたりしている訳ではないし、ただ自分の生活の為に自分の食い扶持を稼ぐ日々。役に立っていることと言えば、本当に消費税をおさめることくらい。誰に迷惑をかけているわけでもない。だけれども誰の役にも立っていない。そもそも、誰かの為に生きるなんて大それた望みだったのかもしれません。自分の為にだけ生きても許される。ここはそんな幸せな世界なのですから。

○あの壁を壊すのは・・・
 しかし。そんな暗黒な心の後ろ向き加減100%の粥見をまた前向きにするのもまた、『三国志』なのでした。

 張飛「私の名前は張飛!死にたいやつはかかってきな!」

 張飛はじめ、超雲や劉備、武将達の命がけのすがたが走馬灯のように現れ、粥見をもう一度奮い立たせるのでした。

 粥見「私やって、私やって命を賭けて誰かを救えるわ!・・・・うわーー!!」

 ユニット美人おきまりの叫び走り。止まりません、止まりませんよ。30歳超えても理屈や理性じゃどうにもならないこと。それをとにかく勢いでなんとかしようというのがこの心の叫びなのです。(だから時々失敗する)勢い、大事。

 そして、粥見はなんとか赤壁前の世界に戻って、諸悪の根源戦争仕掛人の孔明を殺して赤壁の戦いの回避に成功。リンちゃんを無事、お母さんのところへかえすことに成功したのでした。三国志からはやり直し命令が下りますが、粥見の心はちょっとなんだか晴れ晴れとしているのでした。

 まとめ:あの壁を壊したのは「勢い」。「勢い」大事。(ええ!そうなの!)

 さて。そんなこんなであの壁をようやく壊せ、そしてモチベーションも復活してきた粥見。次回以降はいよいよラスト。vol.4のことについてお話しします!