『あなたの知らない三国志の世界』
 第十回「ユニット美人の三国志とはいったい何だったのか4後編」

 2013年の5月〜11月にかけて半年かけてやったユニット美人の三国志vol.0〜4。

 この連載では、せっかく半年かけて作ったんだからそのままにしておくのはもったいない。という省エネ精神から、作品について語っていこうと思います。自分で自分の作品解説なんて、どうなんだい、それなら芝居にするなよ…というようなことを書いていきますので、そういうのが嫌な人は読まない方が良いがと思います。

その4:vol.1ピーチの園でつかまえて:後編
○女性で三国志はできるのか
 今回、女だらけで三国志をやってわかったこと。それは、女には三国志システムでの戦いはできないな、ということです。
 特に劉備は難しい。前回述べたように、劉備は田舎のいち百姓です。後に蜀の国を治めることになるのですが、それは彼がかなり年をとってからの話。それまでは中国全土を西へ東へと逃げ回ります。彼にとっては妻子との落ち着いた生活よりも、まずは一国のあるじになることが先決。血縁よりも、即戦力。有望な若者を家来にし、養子にします。国を手に入れて落ち着いてから自分の子どもを育てればいい。そんな中、その1で述べたような、我が子劉禅ないがしろ・バスケパス事件も起こるのです。
 しかし、女性ならば同じことができるでしょうか?
 もちろん難しいですね。「女性は自らお腹を痛めた子にそんなこと・・・」ということを言いたいわけではありません。女性は男性ほど生殖のチャンスに恵まれているわけではないからです。生死をかけて産んだ子ども、しかも1000年前です。ちなみに2010年のアフガニスタンで乳児の死亡率は16.5%、2012年のワーストは11.4%シエアレオネ。(日本は0.2%)ワーストの国は10%強といったところ。それらの国の状況と三国志の時代とをどのように比べたらよいかわかりませんが、医療や農業技術の発達していない時代のいつ命を狙われるかわからない食うや食わずの逃亡生活と、キビシさといえばどっこいどっこいではないかと思うのです。
 妊娠計画をたてて産休・育休をとって、子づくりと戦争を両立。これはかなりの力技です。現代でさえ働きながらの子育ては大変だと聞きます。子どものいる・いない女性同士の確執問題は、ネット相談のイチジャンルをしめているといってもいいでしょう。3年前発言小町を熟読していた頃に思い知りました。女性は大変です。ましてや戦争は命がかかっているわけですから「子どもが熱を出したから仕方ないというのはわかっていますが、なんとなくモヤモヤします」どころの話ではありません。「り、陸孫が攻めてきて徐州がとられた・・関羽は?え!関羽さんお嫁さんが双子を預けてきて忙しかった?!はあ!?」「だって、そない言っても嫁は最前線で頑張ってるし、たまたま孫が遊びにきてて・・」「そこを狙われたんやないの!旦那にあずけとけ!」「あの人に孫をみせたら、半日で死んでまう。孫をそないな目にあわせたら息子に捨てられる。あんたみたいに息子に捨てられたら私・・・」「もういい、あんたなんかもう姉妹やない!子どもと孫と一生仲良く暮らしたらええやん!」劉備・張飛・関羽の仲良し三人組、桃園の誓いも、もうボロボロです。
 おそらく、戦争のやり方そのものが男性向きにできているのでしょう。「軍隊」「男女平等」で検索をかけたらたくさん出てきたので、興味有る方はどうぞ。そのうち女性同士の戦争も起こったりするかもしれません。後始末がきれいだったりして。「女性らしい細やかな戦闘」や「女性ならではの気が利くトラップ」が注目されるかもしれません。・・・ていうか、ユニット美人の三国志ってひょっとしてそういう視点での作品づくりが求められていたのか。しまった!!!面白そうな視点なのに、そういうの一切描かなかったな。

 さてさて。話しを戻しまして。
 そんな事情もあって、女であり母である劉備だと、義理の姉妹ではなく、子どもを大切にするのではないか、つまり、血を守ろうとするのではないかな…、と、思うのです。それは直感で母系社会がどのようにうごくのかは私の調査不足であったなと今にして思うのですが・・・。血、DNAを残すという、理性では制御できない原理に全体が飲み込まれた時、その人びとは破滅へ向かうのではないでしょうか。
 vol.1のクライマックスは我が子劉禅を殺された劉備がみんなを巻き込み、復讐のための総力戦をしかけ、やられてしまいます。本来ならば関羽の死が劉備を復讐へ向かわせ、大事な局面で国力を削減させることになるのですが、本作では子どもの復讐戦のため、国力削減どころか全滅してしまう、という筋書きにしました。(そもそも劉禅を守らなければゲームオーバーなので、復讐戦に入る前に粥見のゲームは終わっているのですが)天国だか地獄だか、転生だかしている劉禅さんも「この話では、劉備は劉禅を大切にしたよ!」と、ちょっとは喜んでくれるといいのですが。

 さて。次回はシリーズ中人気の高いvol.2。私も大好き。呂布の一生についてお話しいたしますね。

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 (いきなり罵倒したりとか、そんなことはありませんよ。身分は大学の教員です。二児の子どもがいるので会話に困ったらその辺りを話すといいと思います。)
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