妄想劇場2014年「マコの夏休み(3)」

前回までのあらすじ=====
高校2年生、山田マコ17歳は、夏休みを直前にして、1つ上のバスケ部の先輩である森田真二を明光の森に呼び出し、告白をした。
告白の最中、セミにおしっこをかけられたマコは、「LINEに返事下さい!」と言い捨て、その場からダッシュで帰宅。
ようやく来た先輩からのLINEの返事をなかなか読む事が出来ないまま2時間が経過。親友マコとファミレスで落ち合う事に、先輩の返事はいかに…。
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神宮前のファミレスに到着。

ハナ「おーい、山田く〜ん」と親友のハナが席から手を振る。

「笑点やないんやから。」

とおなじみのつっこみを入れてから、席に着く。

ハナ「おい!笑点の山田くんをバカにするな。山田くんは元ずうとるびのメンバーなんやで。」

「なにその新しいネタ。」

ハナ「いや、さっき暇やったからウィキ見てたんよ。びっくりじゃない?」

「ずうとるびすら記憶に無いです。いつの時代よ。」

ハナ「せやけど、元アイドルやで!しかもプロボクサーのライセンスももっているという。」

「すごいっていうか、迷走してたんやね、若いころの山田くん。」

ハナ「迷走といえば、お前だろうが!」

「うう…!それは言わないで…。」

ハナ「もう山田くんの話はどうでもよくって。はい。」

「へ?」

ハナ「はよ!」

「え?」

ハナ「はよ出せやスマホ。」

「う、うん…。」

ハナ「どれどれ。っておい、ロック外して下さい。」

「ああ。はい。」

ハナ「っていうかさ、ほんとに私が見てもいいの?」

「どう思う?」

ハナ「知らんがな!」

「どうしよう。」

ハナ「も〜、自分で見なよ〜。慰める準備は万端やから!」

「…。」

ハナ「せっかく告白したんだろー。」

「…分かった。」

ハナ「おし!」

ああ、ここまでどんだけの段取りが必要なんだ私は。
めんどくさい女子だ。
さてと、皆様、お待たせしました。
見るよ、見ますよ…。開きますよ!
えい!!!


morita sinji:おっす。夏バテしてないか?返事おそくなってごめんな。
俺、女の子に告白されたこと無かったから、焦ってしまって、ひどい態度をとってしまったんやないかな。
返事、直接言いたいねんけど、今日、会えへんか?


「わー!!」

ハナ「なによっびっくりするやん!」

「……。」

ハナ「で、どやったん!」

「会おうって。」

ハナ「えー!!返事はその時にってやつ?」

「みたい。」

ハナ「いつ?」

「今日。」

ハナ「わー!!」

「びっくりするやん!」

ハナ「で、いくやんな?」

「…、いく!!」

ハナ「おお!いきなり前向き!」

「なんか、嬉しいねん。会えるのが。」

ハナ「マコ…!かわいいやつめ!ここは私がおごっちゃる!」

「ハナ!」

ハナ「恋せよ乙女!いざ出陣!」

「おう!!」

なんだろう、ふられるかもしれないのに、ただ、先輩に会えるのが嬉しくって、私はガストを飛び出した。
約束の時間も場所も決まっていないのに。

おおおお!決まってなかった!!場所も時間も!
とりあえず橿原神宮に向かいつつ、センパイに返事だ。

マコ:センパイ、ご連絡ありがとうございます!
今日、私は何時でも大丈夫です。
どこに何時に行けばいいですか?

よし、取りあえず、返事を待とう。
ということで、神宮前の三省堂書店へ。

ペケポン♪

は!!せ、先輩!早い!

morita sinji:OK じゃあ、1時間後に神宮前の東口で待ち合わせでどうかな?

マコ:大丈夫です!

morita sinji:ありがとう。

あ〜、3時間も返事を待っててくれたのかなあ…。なんか申し訳無さと嬉しさが。
もう私これだけで十分です。

女子高生らしく、ティーンのNo1雑誌 セブンティーンでも読むか。


今月の蠍座
(恋愛)
迷いが吹っ切れるでしょう。部屋にこもってくよくよと考えていないで、外出してみると吉。
恋の悩みにひと段落つけることができそうです。フットワークが軽くなっているので、問題があっても解決することができるでしょう。


なんとも言い難し表現…。
吹っ切れる。問題があっても解決する。
ハートマークは2/5だ。
うん、いや、もう、そんなこと気にしない!たかが占い!
と思った矢先、私の目に飛び込んで来た、ティーンのNo1雑誌 セブンティーンの表紙。


「流行服ベスト10!こう着てモテる!」

…流行服。

かわいいはつくる!


かわいい、、、つくる、、、

し、しまった!!!

今日の私…、ハナにガストで会う用の服だ!
つまりは、ジーパンによれよれのTシャツだ!!!
ついでに靴は100均のサンダルだ!!!!!!!!

ダメだ、ダメダメダメ!!!!これはダメだよ!!!
もし、もし告白の返事がOKだったとしても、会った瞬間、気が変わるくらいにダメだ!
どうしよう。あと40分くらいしかない。
家帰って着替えてまた来るなんて絶対に間に合わないっ!

ああ、ああああああああああああ!
ちくしょう!セブンティーンのせいだ!
あんなに心が安らかだったのに!
なんだったら最後まで自分のダサさに気がつかず、壮快にフラれたかった!
とりあえず、先輩にLINEだ!
なんて送るんだよ!

えーっとえーっと…


「や、山田?」

ドキーン!!!!
突如後ろから声をかけられた。
2年間でほとんど会話したことが無いといっても、さすがに分かりますよ。
好きな人の声ですから。

恐る恐る振り返る。
よれよれのTシャツが更に取り乱し感を演出しているに違いない。
そこには、紛う事なき、私が告白をして、そしてこれからお返事をいただく約束をしている先輩が立っていた。

なんでこーなるの…。


つづく。