「岩戸山のコックピット」開催を記念して、特別編集でお届けします。 劇団衛星のメンバーそれぞれが、出演団体のあの人この人をマッチングする対談企画。 10月公演本番まで連載予定!

『岩戸山のコックピット』プレ企画・出演者クロストーク・リレー(2)


わたくし、紙本は、新風館で上演した「コックピット1」(再演)、「コックピット2」(初演)からご一緒させていただいております関西の名俳優、坂口修一さんとトーキングさせていただきました!



坂口さんは、岩戸山のコックピットでは一人芝居で参戦!
坂口さんといえば一人芝居!
そんな坂口さんは今年で俳優20周年。(おめでとうございます!)
内定を蹴って演劇の世界に飛び込んだタントリズム時代からお話はスタートです。

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紙本:坂口さんは俳優歴20周年ですね!一人芝居は、ずっとやってはるってことは楽しいって事ですよね?

坂口:そうですね。

紙本:なんか一人芝居の方は、達成感というかアスリート的、職人的な感覚が「気持ちいいな」って思うんですが、坂口さんは一人芝居の魅力はどこらへんですか?

坂口 :元々、一人芝居を始めたのは、タントリズムという劇団をやっている時だったんだけど、とにかくその劇団の作・演出のサシマさんの、僕へのダメ出しがキツくて、劇団員の中で僕が一番ケチョンケチョンやってん。
「二軍落ちや!」とか言われて・・・、劇団の役者5人しかいないのに二軍なんかあったんかーい!って

紙本 :あははは!

坂口 :ほんで坂口の動きは全部間違ってるから動くな!もう床に寝てセリフだけ言え!って言われて・・・まぁ、そのまま気が付いたらスヤスヤ寝てしまってたんだけど・・・そりゃ二軍に落ちるね(笑)

紙本 :確かに。

坂口 :ダメ出しすごかったよ。稽古初日、台本配られて初めての読みの時点で、
「あ〜もう全然ダメ、こないだの公演である程度のところまで到達したやん、100%とは言わんけど、70〜80%はいったよね?なんでマイナスからのスタートなん?」

紙本:マイナス!

坂口:僕だけじゃなく、みんなにね。初見で台本読んだ時点でこのダメ出し!(笑)
「もういいです、答え合わせします!台本開いて!」

紙本:答え合わせ!

坂口:「はい、1ページ目から。このセリフ言ってる相手が違う。紙本、声だけはいい。他はバツ!坂口、全部バツ!!」みたいな。

紙本:あはははははー!

坂口:全部バツってある?そんなこと?

紙本:それは死ね!って事になりますね。

坂口 :「まず、今回は渋谷が舞台やねん。なのに、お前の背景には農村が見える!」って。いや、すごいよ!それは逆にすごいよ!すごい表現力やん俺!・・・今思えばね(笑)

紙本:なるほど〜面白い。

坂口:その割に、アンケートでも人気無くて。あんなにダメだしされる割に。
当時はめちゃめちゃアンケート気にするタイプやったからね。

紙本:へ〜。

坂口 :でも、客演先ではのびのびと楽しくやらせてもらって、お客さんの僕への反応も良くて。サシマさんは、俺を使うのが下手なんちゃうか〜って疑ってたね。今、思うとめちゃくちゃ恥ずかしいことやけど。

紙本:わかりますよ!

坂口 :で、一人芝居を初めてしたのは森ノ宮プラネットステーションの演劇フェスティバルに誘われた時で、そのフェス、お客さんは無料やったの。

紙本:それは役者して何年目くらいやったんですか?

坂口:5年目か、6年目かくらいの時やったかな。大学卒業して、タントリズム旗揚げして1、2年目の頃やったよ。
学生劇団の頃、先輩から「一人芝居なんてやるもんじゃない!よっぽど上手くないと無理や!手を出すな」って言われてたんやけど、まあ、無料のイベントやから、誰も文句は言わないだろう、なら、やるなら今しかない!と思って。

紙本:いいチャンスですよね。

坂口:そう、で、役者も俺しか出てないから、

紙本:俺を見るやろと!

坂口:そう!で、サシマさんに作・演出をお願いして、

紙本:サシマさんはどんな反応やったんですか?

坂口:普通に、いいよーみたいな。

紙本:へ〜。

坂口:まあ、お願いするばっかりじゃ申し訳ないし、台本は僕も書いて、サシマさんも書いて、面白い方にしようと言う事にして。

紙本:それすごい提案ですね。

坂口:人生最初で恐らく最後の台本執筆。ひどい本やったね、速攻ボツになった。

紙本:サシマさんも、それで坂口さんの台本が選ばれたら傷つきますでしょ。俺…作、演やのに…って。

坂口:ほんまやね、なんちゅー提案や。



紙本:でも、一番ダメ出してる俳優に一人芝居を作・演出するってなんか不思議な関係ですね。

坂口:僕は就職が決まってたところを、サシマさんに劇団の旗揚げに誘われて、内定を蹴って芝居やり出したもんだから、これで食っていくぞー!ってものすごいがっついてたの。
だからサシマさんも、こいつは、他のメンバーとは本気度が違うぞ、と思ってくれてたんだろうね。

紙本:ほーーー!公演はどうやったんですか?

坂口:好評やったよ。劇団では僕にダメ出しばっかりするサシマさんも、ダメ出ししてもしゃーないからね。一人芝居だから、僕をなんとかせなあかんし。
僕の面白いところ見つける稽古になるからすごい楽しかった。
その後5年間、そのフェスに、同じキャラクターが主人公の一人芝居で参加して、black chamber(2006年開催の「文化祭-culture carnival-」)でもこの時の一人芝居が元の作品を上演、さらに「火曜日のシュウイチ」(2007〜2008)でもこれを元に週刊連続一人芝居を丸一年間やることになって、すごい繋がっていくねん。

紙本:坂口さんの暗黒時代の歴史があって、一人芝居を始め、そして一人芝居が繋がって、歴史をつくっていくんですねー。

坂口:サシマさんとのね(笑)
で、今回の一人芝居は、衛星のコックピット祭(2004年「第五長谷ビルのコックピット」)でサシマさんに書いてもらった作品のリメイクになります。

紙本:わーすごい。

坂口:で!その前に、ついにサシマさんが、僕のことを認めてくれる外部の公演であって。

紙本:おお!しかし、そんなに長い時間がかかったんですね。

坂口:惑星ピスタチオの宇田さんと僕の二人芝居。それを観に来たサシマさんが、めっちゃ長い感想メールくれて、「スゴい良かった。」と、
「あの演技が出来るんやったら、もう稽古場でお前にダメ出しする必要は無いから、どういう風にして、あの演技にいきついたのか教えてほしい。」って。

紙本:は〜!

坂口:その公演は台本がなくって、プロットだけで、後はエチュード!
そのプロットも西田シャトナーさんに手伝ってもらいながら当日の朝に徹夜でなんとか完成させたというバタバタ具合で(笑)。
でも、台本なしで即興で演っていたことが、サシマさん的に今までに見た事のない僕の演技で、なおかつタントリズムでやって欲しかった演技だったみたいで、そこから、また微妙にふたりの関係性は変わっていくねんけど。

紙本:で、今回の上演する元になる作品の創作に入るわけですね。

坂口:そうそう、だからそういう流れもあって、一回書いてきてもらった台本を、解体して、並び替えて、僕のアイデアも盛り込んで、プロットの状態にまでしちゃって・・・それも本番2日前くらいやったけど(笑)。
本番は、お客さんと即興でつくっていく形式になったんよね。

紙本:その公演のサシマさんの感想はどうやったんですか?

坂口:あの・・・サシマさん、音響と映像と照明を全部一人でしてて、しかも当時のコックピット、オペが舞台の裏やったから。

紙本:そうだそうだ。客席側になかったんでした!

坂口:だからもう観てへん!オペで必死で(笑)。 
でも、当時のサシマさんはすごくて、お客さんと即興でつくっていく芝居なので、僕が舞台上に何人かお客さんを上げて絡んでいくんだけど、そのお客さん達の名前を、裏でオペしながら全部記録して、最後にエンドロールで流してたのよ。当時はそんなこと珍しかったから、お客さんもすごい喜んで。

紙本:今でも全部一人でやりながらエンドロールまで作る人居ないと思いますけどね!今回はどんな感じで進んでいるんですか?

坂口:まだ謎です。

紙本:!

坂口:初演時の話の骨格が当時の時事ネタとか結構満載で、そのままでは再演するのはキツいんだけど、サシマさんは今、東京で働いているのでなかなか一緒に創作できる環境が作りにくくて。
でも逆に。僕しかサシマさんを演劇の世界に引っ張って来れないから。
そんなこんなで毎回ひどいめに合わせてます(笑)。

紙本:そうですね!あんなにダメ出しもらってたのに。

坂口:そうそう。劇団辞めた後の方が、台本書いてるんじゃないかな。
「火曜日のシュウイチ」の時なんか毎週15分の一人芝居を一年間書いてくれたからね。「もう書けません。」って言って劇団解散したのに(笑)。

紙本:めちゃくちゃや、坂口さん。

坂口:ほんまやね、サラリーマンの土日の休み全部使わせてね。
まあ、すでに現時点で台本の〆切は過ぎてるんやけどね。

紙本:サシマさんは本番は来られるんですかね?

坂口:え?来てくれないとオペできないよ(笑)。

紙本:あはははは、ほんとだ!お会い出来るのを楽しみにしてます!

インタビューおしまい。

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インタビューが終わった後、坂口さんにインタビュー記事を読んで頂き、2つの質問に答えていただきました

「今の坂口さんの稽古場に、もし過去の坂口さんがいたらどう思いますか?その逆は?」

今の僕が過去の僕について思うことは…
「ガツガツしてて、うっとおしいな〜。でも、そのガツガツした感じ俺は嫌いじゃないけどね。」

過去の僕が、今の僕に思うことは…
「この人、どうやって生活してはるんやろ?稽古終わったら飲みに行って詳しい話を聞きたい!」
(紙本:やっぱりガツガツしてる…)

「今の坂口さんから、初めて一人芝居に取り組もうとしている坂口さんに一言アドバイスをするなら?」

サシマさんを大切に!
(紙本:これからも大切に!)


坂口修一
http://tuchi.secret.jp/
1993年関西大学入学時より、同大学の演劇サークル展覧劇場で芝居を始める。1997年5月旗揚げから解散まで劇団「T∀NT RYTHM」の全公演に参加。
長い手、短い足、でかい顔、特徴的な体型を生かし、コミカルな演技を得意とする。
1年間、毎週火曜日たった1人ですべて内容の違う100ステージをこなすなど、そのバイタリティ溢れる役者魂と演技力が評価され、出演依頼があとをたたない。
オリジナルテンポのメンバーとして海外にもその活躍の場を広げている。
関西屈指のエンターテナー。