おしゃれ雑誌編集部! 〜演劇人スタイル〜
vol.23「いい訳」宮沢賢治風

演劇人、紙本明子が欲しい物や興味のあるもの、人、あれこれをテーマに、なるべく背伸びせず、演劇人の為のおしゃれマガジンを作ります。

ハンサムリレー第三回目にして、紙本は窮地に立たたされていました。
ユニット美人の公演にかまけて、次のインタビューのアポイントを取っていなかったからです。
編集長から、催促の連絡。
色々言い訳も考えてみたけれど、月一更新のこのコーナー「公演があった。」が言い訳にならないことは、紙本もよくわかっていたのです。
だけれども、どうにかお茶を濁そうとネタも考えてみたのですが、どうやったって上手くいきません。
それもそのはず、これまで色々な手段でお茶を濁してきたからです。
「ちゃうねん。男前に連絡するのは、普通の人に連絡するよりも神経使うねん。」
こころの中で紙本はそう言いましたが、すぐに自分の言葉が耳に聞こえて来たように思えて、顔を赤くしてただ黙ってパソコンの前に固まっているのでした。
そこに見かねた新人劇団員の中田くんが声をかけました。



「紙本さん。大丈夫ですか。なにか困ってるんですか?」
彼は、へらへらとした顔でへらへらとした口調で声をかけてきたものですから、紙本もちょっと腹が立ちましたが、すぐに機嫌を直しました。
助けてほしかったからです。

「明日更新のサイトの記事のネタがないねん。今からアポイントをとって取材させてほしいなんて、そんな失礼なこと出来ないし、どうしようかな…。」

中田くんも困りました。
そんないい加減な事で困っているとは思わなかったですし、そんな事を相談されてもどうしようも出来ないな…と思ったからです。
「うーん、どうしたらいいですかね。」
中田くんはすっかり困ってしまい、メガネを外して、考え込みました。

その時です。
紙本の目の前にしんじられない光景が飛び込んで来たのです。



「君はだれだい?」
「え?中田です。」

紙本はおもわずおおきな声でびっくりしてしまいました。
「えええ!中田くん?君が中田くん?」



中田くんは「そうですよ。」と言いながら、なぜか髪の毛をほどいったのです。
そうしたらどうでしょう。
目の前がさーっと明るくなり、紙本はおもわず何度も目を擦ってしまいました。



そうです。
そこにはちょっと変な男前がいたのです。
ちょっと変というのは、おかしい。面白い。というのとは違います。
それは、雑誌の中から飛び出してきた、二次元なら平気なのに三次元ではちょっと受け止められないというような、
本物はいないと思っていたのに、突然目の前に現れた。という感じのおかしい男前だったのです。
中田くんは悩みながら、かっこいいポーズをとっていましたので、紙本はおもわず写真をとっていました。



この新人の中田くんは実は男前だったのです。
紙本は思いました。
今週のハンサムリレーはこれで行こう。
そして、みんなにこの中田くんのポテンシャルを伝えなければと思うと、一目散に劇団員の元へ走り出したのです。

おわり。