「僕の中の舞台監督」 インタビュー/首藤慎二(俳優/劇団衛星/ベビー・ピー)![]()
俳優である首藤さんが、
過去一度だけ舞台監督を務めた経験があるという。 その背景には何があったのか? 舞台監督とは一体なんなのか? 演劇の持つ魅力にもふれながら、ざっくばらんにお話を伺いました。 (インタビュアー:紙本明子) ◆舞台監督をやった事があるということですが、なぜ? 大学2回生の秋に、京都産業大学の演劇部「劇団ACT(アクト)」に入って、それが演劇人生のスタートでした。 3年生の4月に役者と音響主任で本番を経験して、次の公演が6月にスタジオヴァリエ(京都市左京区吉田)で決まっていたんですが、スタッフ配置どうするか?っていう話しになった時に、 メンバーに突如、 「しんちゃん、舞台監督やってや。」って言われて。 舞台監督が何なのか?とか分からなかったんですが、とりあえず引き受けました。 ◆舞台監督という存在は知っていたんですか? いえ、ほぼ初めて意識したくらいでした。 楽な仕事では無いだろうな。くらいは分かってたんですけど…。 その後、演劇人のバイブル「ザ・スタッフ」(ザ・スタッフ舞台監督の仕事・伊藤弘成)を渡されて、まずはそれを読みました。 その時に、舞監って、全てのスタッフをしきる人なんや…!って気づきました。 ◆ 仕事内容はどうでしたか? 最初は、これまで舞台監督をやった事のあるメンバーに手伝って貰いながらやってたんですけど。 全部のスタッフ会議に出席して、「いついつまでにこのプランを上げて下さい。」とか、 「きっかけ表を出して下さい。」とかの様々な〆切を設定しました。 あと、学校への劇団員の公欠届けを申請したり、ホールの阿川さんに連絡をとったり…、ホールに入る前までに、かなりいっぱいいっぱいになってて、大学行ってましたけど、舞監の事ばかりやってました。(笑) ◆ホール入りからはどうでしたか? 一番大切だったのは、タイムキープでした。 うちの団体は時間に厳しかったですから。 だから、はじめてストップウォッチ買いました。コーナンで。 ◆100均一とかでは無く? ちゃんとした物を買った方が言いって言われたので。 ◆1000円くらい? いえ、3000円くらいしたんじゃないかな。 スケルトンでしたから。専攻投資ですよ。 形から入る主義なんで(笑) 舞台監督は、 すべての進行状況を把握しなくてはいけない。 ![]() それが舞台監督やって習ってたんで。 ◆ホール入中は大変だった? 公演の規模はあまり大きくなかったので、そんなにトラブルもなかったんですけど、 舞台監督に集中しすぎて、役者でも出ることになっていたんですけど、二足の草鞋、それがしんどかったですね。 ◆舞台監督に集中したかった? そうですね。 本番の役者の仕事がどうたったかって全然覚えてなくって(笑) 3日間で4ステだったんですけど、それが無事終わって、バラシも全部終わって、他の劇団員は「今から打ち上げや!」ってみんな劇場から出ていったんですね、 その後、僕はホール使用料払って、何も無くなってガランとしたホールを見て、 「あー、終わったなー。」 って、しばらく劇場をみてんたんです。 そしたら、 先輩の久保さんがやってきて、 「お疲れさん。」 って肩をぽんってたたいてくれたんです。 そしたら、なんか涙がこみ上げてきて…泣いちゃいましたね。 ◆しくしくって感じで泣いたの? いや、嗚咽に近かったですね。 ◆その時の久保さんの反応は?ひいてた? いや、まあ、「慣れてないのに、いや頑張ったよ。うんうん。」って感じでしたよ。 ◆久保さんと二人きり? そうです。 ホールに二人きりでした。 で、「よし打ち上げ行こう!」ってなって、後は楽しい飲み会でした。 今でも鮮明に覚えていますね。 ◆じゃあ、泣いたのをしってるのは久保さんだけ? そうですね。 久保さんとヴァリエだけです。 ◆やってみての感想を聞かせて下さい。 全部わかってないといけないポジションで、その当時は僕はなんにも演劇とか舞台をしらなかったので、ほんとにいろんな人に教わりながらやってました。 でも逆に、舞台ってこうやって出来ていくだって、かなり早い段階で知る事が出来たので本当に良い経験でした。 優しくなれました ![]() ◆やってよかった? いや、やってなかったら、今の僕は居なかったと思います。 役者続けてなかったかもしれない。 完全にターニングポイントですね。演劇にはまったきっかけです。 あと、優しくなれました。 仕事出来ない人がいた時に、その人にイライラするんじゃ無くって、 「この人がどうしたら、力を発揮できるんだろう?」って考えれるようになれました。 ◆そういえば、首藤くんは人にイライラしないよね?この経験が活かされてる? いや、それは昔からですね。(笑) ◆どうしてそうできるの? 人に興味が無いからですかね。 あと、なるべく、円滑に、誰も傷つかず上手くいけばいいなって思ってるからかな…。 なんか、「いー!」ってなるのが嫌なんですよね。 ◆私は結構「いー!」ってなるタイプやからなー。 そうですね。 (紙本はむかついた。) でも、それがいいと思います。(フォロー) 僕みたいにストレスを抱えっぱなしだといつか爆発しそうで…。 ◆あ、でも舞台監督の人って、イライラしている人あんまり居ないかも。 そうですね。 知ってる限りいないなー。 大切な要素なのかも。 ◆首藤くんの中の「舞台監督」とは? (1分くらいの間) 影武者ですね。 ◆影武者? 表の舞台は、作演出や役者なんですよね。 舞台監督の仕事って、お客さんには想像出来ないじゃないですか。 でも、その舞台を裏で支えて、ミッションを成功させてるのは、 舞台監督なんですよね。 ◆影武者って誰かの影武者だと思うんだけど、それは誰なんだろう? 「演劇」ですね。 演劇すべての影武者だと思います。なくてはならないものだと思います。 ◆では最後に、世界に一言お願いします。 これ、いりますか? ◆お願いします。 うーん、 世界は、演劇だと思います。 世界が演劇。 そしてそれを支えているのは、舞台監督。 ◆ということは、世界を支えて言えるのは、舞台監督って事で良いでしょうか? そうですね。 ◆今日はどうもありがとうございました。 おしまい。 ![]() |
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