おしゃれ雑誌編集部! 〜演劇人スタイル〜
vol.4「インタビュー」

演劇人、紙本明子が欲しい物や興味のあるもの、人、あれこれをテーマに、 なるべく背伸びせず、演劇人の為のおしゃれマガジンを作ります。
第四回目は、ついに首藤慎二さんのインタビュー記事をアップ!
どうぞご覧ください!


「僕の中の舞台監督」

インタビュー/首藤慎二(俳優/劇団衛星/ベビー・ピー)
写真1
俳優である首藤さんが、
過去一度だけ舞台監督を務めた経験があるという。
その背景には何があったのか?
舞台監督とは一体なんなのか?
演劇の持つ魅力にもふれながら、ざっくばらんにお話を伺いました。
(インタビュアー:紙本明子)


◆舞台監督をやった事があるということですが、なぜ?
大学2回生の秋に、京都産業大学の演劇部「劇団ACT(アクト)」に入って、それが演劇人生のスタートでした。
3年生の4月に役者と音響主任で本番を経験して、次の公演が6月にスタジオヴァリエ(京都市左京区吉田)で決まっていたんですが、スタッフ配置どうするか?っていう話しになった時に、
メンバーに突如、
「しんちゃん、舞台監督やってや。」って言われて。
舞台監督が何なのか?とか分からなかったんですが、とりあえず引き受けました。


◆舞台監督という存在は知っていたんですか?
いえ、ほぼ初めて意識したくらいでした。
楽な仕事では無いだろうな。くらいは分かってたんですけど…。
その後、演劇人のバイブル「ザ・スタッフ」(ザ・スタッフ舞台監督の仕事・伊藤弘成)を渡されて、まずはそれを読みました。
その時に、舞監って、全てのスタッフをしきる人なんや…!って気づきました。


◆ 仕事内容はどうでしたか?
最初は、これまで舞台監督をやった事のあるメンバーに手伝って貰いながらやってたんですけど。
全部のスタッフ会議に出席して、「いついつまでにこのプランを上げて下さい。」とか、
「きっかけ表を出して下さい。」とかの様々な〆切を設定しました。
あと、学校への劇団員の公欠届けを申請したり、ホールの阿川さんに連絡をとったり…、ホールに入る前までに、かなりいっぱいいっぱいになってて、大学行ってましたけど、舞監の事ばかりやってました。(笑)


◆ホール入りからはどうでしたか?
一番大切だったのは、タイムキープでした。
うちの団体は時間に厳しかったですから。
だから、はじめてストップウォッチ買いました。コーナンで。


◆100均一とかでは無く?
ちゃんとした物を買った方が言いって言われたので。


◆1000円くらい?
いえ、3000円くらいしたんじゃないかな。
スケルトンでしたから。専攻投資ですよ。
形から入る主義なんで(笑)

舞台監督は、
すべての進行状況を把握しなくてはいけない。

写真2
お昼ご飯も夜ご飯も、劇団員に買いに行ってもらって、劇場から一歩もでませんでしたね。
それが舞台監督やって習ってたんで。


◆ホール入中は大変だった?
公演の規模はあまり大きくなかったので、そんなにトラブルもなかったんですけど、
舞台監督に集中しすぎて、役者でも出ることになっていたんですけど、二足の草鞋、それがしんどかったですね。


◆舞台監督に集中したかった?
そうですね。
本番の役者の仕事がどうたったかって全然覚えてなくって(笑)
3日間で4ステだったんですけど、それが無事終わって、バラシも全部終わって、他の劇団員は「今から打ち上げや!」ってみんな劇場から出ていったんですね、
その後、僕はホール使用料払って、何も無くなってガランとしたホールを見て、
「あー、終わったなー。」
って、しばらく劇場をみてんたんです。
そしたら、
先輩の久保さんがやってきて、
「お疲れさん。」
って肩をぽんってたたいてくれたんです。
そしたら、なんか涙がこみ上げてきて…泣いちゃいましたね。


◆しくしくって感じで泣いたの?
いや、嗚咽に近かったですね。


◆その時の久保さんの反応は?ひいてた?
いや、まあ、「慣れてないのに、いや頑張ったよ。うんうん。」って感じでしたよ。


◆久保さんと二人きり?
そうです。
ホールに二人きりでした。
で、「よし打ち上げ行こう!」ってなって、後は楽しい飲み会でした。
今でも鮮明に覚えていますね。


◆じゃあ、泣いたのをしってるのは久保さんだけ?
そうですね。
久保さんとヴァリエだけです。


◆やってみての感想を聞かせて下さい。
全部わかってないといけないポジションで、その当時は僕はなんにも演劇とか舞台をしらなかったので、ほんとにいろんな人に教わりながらやってました。
でも逆に、舞台ってこうやって出来ていくだって、かなり早い段階で知る事が出来たので本当に良い経験でした。

優しくなれました

写真3

◆やってよかった?
いや、やってなかったら、今の僕は居なかったと思います。
役者続けてなかったかもしれない。
完全にターニングポイントですね。演劇にはまったきっかけです。

あと、優しくなれました。
仕事出来ない人がいた時に、その人にイライラするんじゃ無くって、
「この人がどうしたら、力を発揮できるんだろう?」って考えれるようになれました。


◆そういえば、首藤くんは人にイライラしないよね?この経験が活かされてる?
いや、それは昔からですね。(笑)


◆どうしてそうできるの?
人に興味が無いからですかね。
あと、なるべく、円滑に、誰も傷つかず上手くいけばいいなって思ってるからかな…。
なんか、「いー!」ってなるのが嫌なんですよね。


◆私は結構「いー!」ってなるタイプやからなー。
そうですね。
(紙本はむかついた。)
でも、それがいいと思います。(フォロー)
僕みたいにストレスを抱えっぱなしだといつか爆発しそうで…。


◆あ、でも舞台監督の人って、イライラしている人あんまり居ないかも。
そうですね。
知ってる限りいないなー。
大切な要素なのかも。


◆首藤くんの中の「舞台監督」とは?
(1分くらいの間)

影武者ですね。


◆影武者?
表の舞台は、作演出や役者なんですよね。
舞台監督の仕事って、お客さんには想像出来ないじゃないですか。
でも、その舞台を裏で支えて、ミッションを成功させてるのは、
舞台監督なんですよね。


◆影武者って誰かの影武者だと思うんだけど、それは誰なんだろう?
「演劇」ですね。
演劇すべての影武者だと思います。なくてはならないものだと思います。


◆では最後に、世界に一言お願いします。
これ、いりますか?


◆お願いします。
うーん、

世界は、演劇だと思います。
世界が演劇。
そしてそれを支えているのは、舞台監督。


◆ということは、世界を支えて言えるのは、舞台監督って事で良いでしょうか?
そうですね。


◆今日はどうもありがとうございました。

おしまい。

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