妄想劇場 ーその5ー
「運命の待ち合わせ」

昨日の電話から、200回以上は鏡を見た。
何をそんなに確認することがあるのか・・・。女の子ってすごいなー。

今日は12:15分に西棟の入り口に集合なのだ。
ゼミ登録どころじゃない!ああ!

「あーちゃん、なんか雰囲気かわってない?」
さっそく友達の静香に声をかけられた。

「え!そうか、そうかな〜。髪型かえただけやし〜」
「うーん、化粧もしてるし、、、何かあったやろ〜!」

何かあったよ!何かあったけど、まだ、まだ言えないのよ。だって小学生みたいな恋なんだもん!

「え、いや、別に、気分がそんな感じやねん。」
「ふ〜ん・・・、今度じっくり聞かせてもらうわ。」

女の子ってすごいな。
静香は陶芸科の中で、めずらしく恋多き、他の学科の友達もたくさんいて、
いつも男とつるんでいる。
彼氏が今誰なのかも分からない。そんな静香がうらやましかったりもする。

「あーちゃん、お昼いかへん?」

「え!あ、でも今日、ちょっと約束してんねん。」
「誰と?一緒してもいい?」
うう、なんてずうずうしいやつだ・・・!やんわり断ってるのに〜。
「ええっと、静香知らん人やけど、いい?」
「そうなん?え〜、どこ行くの?」
「西棟・・・」
「ほな、西棟まで一緒に行く。」
なんやのん!気付いてよ静香、わたしこんなに焦ってるのに〜。
そんな鈍感というか、超マイペースなところが静香のいいところでもあり、困ったところでもある。
ま、別にそんなにまずいこともないから、いいか。ちょっと恥ずかしいだけなのだ。

「・・・、そうしようか。」

西棟に付き、なぜか静香も一緒に待っている。
「友達来たら、どっか行くし、それまで一緒にいてよ〜。」

そんなことをサラリと言える所が、モテる秘訣なんだろうなーと思う。

「紙本さんっ!」
まだ夏の光がまぶしく降りそそぎ、逆光の中、ポールスミスが走ってくる。
ポール!
「信ちゃん!」

あれ?

「信ちゃん、久しぶりやん!」
「あれ、静香や!」

私の目の前で、静香とポールの会話が繰り広げられている。

「アーチャンの友達って、信ちゃんのことやったん?」
「ええっと、そうやねん、あれ静香、知り合い?」
「うん。高校一緒やったし」

「紙本さんと静香、一緒の学科だったんだねー!」
「そうやねん、鮫島くんと静香一緒やった方がびっくりしたわ〜」

なんかすげい焦りと嫌な予感が込みあがってくる。

「二人はどういう関係なん?なんで知り合いなん?」
静香のマイペースな質問が・・・。
「えー、と図書館で、」

「運命の出会い!」

え?

「だよねー?」

そんな、そんな恥ずかしいことを、なんでしかも静香の前で〜!
違う、くはないけど、ああ!静香、違うねん。いや違うとは違うけど、はずかしー!!けどうれしい〜!

「また出た、信ちゃんの癖。何人と運命してるのよ〜」

えっと。癖?ですか?
え?
ポール?
ポール!?

何も言わない、ポール。
「3人でご飯食べよ〜」
静香は、鈍感でマイペース。
私は一人固まり。
ポールの顔は見れない。

つづく。