「妄想劇場ーその4ー」



2003年 8月29日

「好きな人が出来ました。」

ジブリ映画の1シーンみたいやな・・・。
小学生の頃からずーっと付けている日記。といっても毎日ではない。
私そんなにまめじゃないから。
ニュースがあった時にだけ書くこの日記も、これで12冊目だ。

中学生の頃、親に読まれてめちゃくちゃ怒った事があった。
○ ○くんが好きだけど、どうやってバレンタインチョコを渡したらいいか分からない〜!というような内容の日記をだったと思う。
家に帰ったら、チョコレートが置いてあり、
「これ梅本くんに渡したら?」
とデリカシーのかけらも無い母親が言った。

「プライバシーの損害や!」と怒る私に、
「チョコレート買うお金ないやろ、持っていき。子供の成長を見届けるのも親の仕事や。」と母は言った。
あまりの返答に言葉が出なかった。ただ泣きじゃくっていた私の代わりに、父が怒ってくれた。

私の母はどこかおかしい。
周りを気にしないというか、順番がむちゃくちゃというか。

父と母はかつて、中学教師とその生徒だった。
中学1年生の母親は当時担任であった父に恋をし、いきなり告白をした。
勿論、父は教師という立場から、つきあう事は出来ないと断った。(ここが真面目な父の面白いところだ。)
しかし母親は諦めなった。
毎日、手紙を書いた。
父を自分の父親(おじいちゃん)に無理矢理会わせ、「先生と結婚する!」と宣言までした。
高校に進学してからも、お弁当を作って学校に届けたり、授業で分からない事があると、父に勉強を教わりに押しかけたりしたそうだ。
出会いから8年後 母21歳、父35歳 めでたく?結婚した。

そんな母のめちゃくちゃな所が、少し羨ましかった。
私にちょこっとでも母のむちゃさがあればなーと。

結局、梅本くんにはチョコレートは渡せず、そしてチョコレートどころか、今迄愛の告白をした事がない。

大学に入り、ますます恋愛に対して興味が薄れていた。
興味が薄れるというか、自分に自信なんてものも無いし、勝負なんて出来ないし、自分を磨くことも出来ないし、、陶芸は地味やし。
出会いも無いし。(これは言い訳)

そんな私が恋をした。
今日は半年ぶりに髪の毛を切って、はじめてカラーリングとやらをしてみた。
明日から学校がはじまる。
いつ出会ってもいいように、準備をしなくては!

夏休み、図書館で会ってから1ヶ月が過ぎた。
どうして大学の夏休みは2ヶ月もあるんだ!と夏休みが長いことをはじめて恨んだ。
携帯の番号しか聞けなくて、まさか用事もないのに電話も出来なくて、むこうからも電話がかかってこないから、会うすべも無く。
いきなり電話したらきもいかなー、きもいかなー。

という内容の日記ばかり毎日書いていた。
そして明日はまちにまった後期スタート!

美容院から帰って来てから、鏡の前で妄想ばかりしていたその時、携帯が鳴った。
〈鮫島信吾〉
ボボボボボ、ボーダーマン!!!

え〜!なんでなんで電話が〜!心臓がいきなり痛い。出なくては・・・!
「はいっもしもし」

「もしもし、紙本さん?鮫島です。」

「へえ、あ、そうですね、ああ、お久し振りで」

「明日、学校来る?」

「え?うん。」

「そか、よかった。夏休み中、電話しようかなって思ってたんやけど、なんかなかなか出来なくって、
明日学校で会えるしいいかって思ってさ。」

「あ〜、私も電話しようかとおもってたんやけど、ごめん、ごめんなさい。」

「ううん!でさ、もしかして明日お休みしはるんやったらどうしようっ!?て思って、これ確認の電話。」

(どういう意味なの〜!あ〜、分からない、恋に奥手だから、こういう時になんて言っていいのか、分からないよ〜。)
「あ〜、だ、大丈夫。」(何が!?何が大丈夫なのよ〜?)

「そか、じゃ、お昼ご飯一緒に食べない?」

「え!あ、いいね〜。ええと、じゃあ・・・。」

「西棟の学食に集合しよう」

「わ、分かった〜」

「じゃ!明日!」
プー

いきなり初心者には、夢のような、ドラマのような恋の幕開けです。

つづけ!