こないだ劇団のミーティングで、
「紙本さんのコーナー、KLTってお店紹介するコーナーやったんちゃいます?」
と言われてしまい、番外編がひたすら続いているという事を指摘され、ギクリとしました。
「妄想劇場」が終わったら、おもいきってコーナーを変えようと思います。
タイトル募集中です。


妄想劇場―その3―

ちゅちゅちゅ、、、中途半端な反応をしてしまった。
知ってる、、、?よ!みたいな。
あ〜、おかしい〜、おかしいよ今の反応〜!!反省の渦に呑み込まれる〜。
汗が止まらない。

彼は「久しぶりですね。」と言い、また読んでいた本に顔を戻した。
それから15分が経った。

(なんで奈良で会ったの?奈良出身?中学一緒なんちゃう!?
ええ!覚えてないよ、っていうかまず年齢も何もかもしらんよ。)

本を読むふりをしながら、そんな事ばかりが頭を駆け巡る。
うわお!!!!
そんな事より、沙粧妙子! ははは、はずかし〜。

ボーダーマンは何を読んでいるのだ!?
チラ。
「ナンシー関のなにもそこまで」

おおう、以外にくだけたものを読んでいる、、、顔、笑ってる!!

「おねーさん、えらい汗やね。大丈夫か?」
いきなり隣のおじさまが、私のただならぬ汗と不審な動きに気が付き、声をかけてきた。

「え!そんなに汗、かいてますか・・・。」
「おお、えらい汗やで、雨でもふっとんのかとおもたわ〜。」

恥ずかしさを通りこして、天国へ。
もう、今日はこれ以上無理だ・・・。帰るしかない。
立ち上がり、ふと彼を見た。
彼は心配そうに、私を見ていた。

目が合う。

やめてくれ!そんな、小室哲哉みたいな瞳で見ないでくれ!
「だ、大丈夫なんで。。。」ペコリ一礼をして席をたった。
ダッシュで本を返し、ダッシュで入り口へ。
受付の時計をちらりと見ると、17時を過ぎていた。

しまった!犬の散歩や!
今頃玄関先で泣き叫んでるかも。。早く帰らな・・・。

自動ドアーが開く。
背中が気になる。
振り返ろうか、いやここは気にせず帰る方が効くはず。
振り返らないぞ!よし!
一歩踏み出したその時、
「みょうがさんっ」

え?と思う間も無く、ボーダーマンだと分かる。
だって待ってたんやもん、後ろから声かけられるのを。

振り返る。
私のヒーロー、ボーダーマン参上!
ほほえみながら、こちらへ小走りでかけてくる。
ボーダーが奇麗に揺れている。

「あの、みょうがではないんですが・・・」
「ごめん、まだ名前聞いてなかったから。あ、先に自己紹介、鮫島信吾です。」

さ・め・じ・ま・し・ん・ご

なんて素敵な名前なんでしょう。芸能人みたい。
私は、自分の名前を言うのが、昔からあまり好きじゃない。
両親には申し訳ないけれど、言いにくいし、なんかペラッとしている感じがして・・・。

「あ、あの、紙本明子です。」
「かみもとさん、帰る方向一緒なら送るよ、体調悪そうだし。」
「あ、いえいえ、体調は全然良くて、それより、あの、犬の散歩がありまして、
それで急いで帰らないといけないもんで、なのでせっかくなんですが、その」
「歩き?」
「え?はい。」
「じゃ、送るよ!僕、自転車だから、そっちの方が早いでしょっ」

僕・・・僕って言った。
おぼっちゃんとみた。
それより、なんてやぼったい喋り方なの私!
なんで可愛く喋れないのよ私!

「ああ、じゃお言葉に甘えて・・・」

ボーダーマンと2けつをする事になるとは思ってもみなかった。
家までは自転車で5分。緊張はしつつも、会話は途切れなかった。
・現在大学2回生の20歳(以外に若い・・・)
・造形大の舞台芸術学科である。ということ。
・ 実家は大阪。奈良にはおばあちゃんが住んでいるので、夏休みに帰省しているだけだということ。
・ 私の事は、図書館で会う以前から知っていたという事。

今日ここで会ったのは、勿論たまたまなんだけれど、
「これは奇跡だよっ。」と、ペダルをこぎながら、彼はしきりに言っていた。


つづく