ー妄想劇場ー

疲れた時は妄想に限る。
その日も疲れていた。
4泊5日のテニスサークルの合宿から帰ってきたのだ。
毎年合宿から帰ってくると3キロは痩せている。合宿も今年で三年目。
ヘロヘロになって帰ってくると、アパートの玄関の隙間に大家さんから手紙があった。
うわお、家賃の催促かな・・・、やだな〜。

「紙本様 
宅配便が届いてます。預かってますので、向いの平野まで取りにきて下さい」

宅配便か、なんやろう。。取りに行くの嫌だな、先に家賃振り込もうかな・・・。
と思いつつ、やっぱり面倒で、とりあえず宅配便を取りにいった。

田舎から野菜が送られてきてた。ありがたいな。
早速段ボールを開けると、大量の「みょうが」が。
・・・みょうが か・・・。どうないして料理すんのさ。。

学校に持っていったら誰かいるかも。お裾分けだ〜。
田舎からの野菜や、お米を友達にお裾分けするのは、結構好きなのだ。

早速 研究室に行ってみる、、が、誰もいない。。。
とりあえず、冷蔵庫に入れておこう、
「みょうが大量に取れたので、お裾分け、早いもの勝ち!」(かみもと)
メモを冷蔵庫に貼っておいた。

せっかく学校に来たので、図書館によって帰ろうかな。
私は、小説や、伝記はほとんど読まない、けれど図書館は好きだ。
読む本といえば HOU TO本 か、絵本ばかり・・・。

小柄な私は一番の上にある棚に手が届かない。
「やれやれ・・・。台、台っと。」
とその瞬間、アイロンのきれいにあてられてストライプのカッターシャツが、 私の取ろうとしていた本を取ってしまった。(ああっっと、それ、あの私が、、、)

男「はい」
明子「へ」
男「<みょうがが美味しい季節>でよかったのかな。」

よくある事である。

「はい、あ、どうもありがとうございます!」
男「しー。」
「ああ、ごめんなさい・・・!」

ストライプのカッターシャツをズボンの中にきっちり入れて、きれいなベルトに淵なしの眼鏡、 色が白く、賢明な面立ち。TKに少し似ている、少しタイプだけれど、一生友達にはなれない。

よくある事である、図書館で、本屋で、手が届かずに困っていたら、代わりに取ってもらえちゃう。


「みょうがが好きなんですか?みょうがを食べると、物忘れがひどくなりますよ。」
「ええ!そうなんですかっ」
「??、冗談ですよ、よく言うでしょ。(笑)」
「そうなんですか。。。。」カーーー!(恥)

出会いはそこら中にこぼれている。
「交差点をすれ違うだけでも出会いだよ。」
かつての劇団員Cさんの名言である。

これは出会いなのか?
それ以上の会話は勿論無く(勿論と言ってしまうところが私の駄目なところ、なんの為のHOW TO本なんだか。)
私は下宿先に帰り、田舎から大量に送られてきたみょうがの料理をした。



つづく