『満ちたりた朝まで眠ってる』

ポケットの中には常にビスケットが入っている。
鍵と携帯電話とモバイルバッテリーとビスケットを持っている事を確認してから家を出る。
もはや習慣になっている。
ビスケットは大体2枚、腕白な気分の時はさらにプラス1枚だ。
ビスケットは何も包まずに剥き出しのままポケットに入れる事にしているので、
大体午前中にはわれている。
われるならまだ良い方で、ほとんどは午後になると粉々になっている。
そして私のポケットは粉にまみれるのだ。
冬はまだいい。
夏は悲惨だ。
四季を感じるのはそんな時かもしれない。
日常。
私は思うのだ。
ビスケットはポケットではなく、鞄などにしまっておくほうが良い、と。
「食べたい時にサッと食べたいのさ」
という理屈は通じない。

割れたら食べられない。
眠ったら食べられない。

同じ理屈だ。

だから多分、そういう意味で(どういう意味かはみんなで考えてみても良いのかもしれないが)私はビスケットを食べたくはないのだと思う。
割りたくもないけれど。
ポケットに入れたいのだ。
欲求。いや、衝動か。
本能、いや、運命なのかもしれない。

1日の終わりにポケットに手につっこみ、粉をまとい、それをスッと吸い込む。

すごく嫌な気分になる。
毎日、毎日。
汚い行為だとも思う。
毎日、毎日。
粉がなくなるまで吸い込み続ける。
毎日、毎日。
一瞬、美味しさを感じる場合もある。

私はそうやって人生と付き合っている。
できれば誰にも知られたくない秘密。