『幅が広い家にて』

知らない人の家のトイレをお借りして私は今、用を足しています。
「はじめまして」
もありません。
ただもちろん無言ではありません。
挨拶はありませんでしたが、
「失礼します、すみませんトイレをお借りします」
という宣言をさせてもらいました。
それが私なりのこの御宅の家主さんへの心遣いだったのです。

家主さんは太い銀髪でおそらく初老のおじさんのようなおばさんのようにみえます。
おじさんなのかもしれないが
おばさんよりの人物です。

「え、あ、どうぞ」

と喋ったその声のトーンがおじさんよりだったのでより混乱を強めている部分はあります。
とはいえ。
ひらたくいえば「どっちでも良い」というのが正直なところです。
そしてどっちでも良くないのが用を足し終わった後の私の行動です。
私には二つの選択肢があります。

帰るか否か。

という訳です。
いずれにせよ、
感謝の言葉は述べた後の事ではあります。
帰らない場合はただ居る事になるでしょう。

帰る理由も、
帰らない理由も、
私にはわからない、という事が混乱を招いている原因です。

今度はバリカンを購入して
知らない人の家で散髪してもらうのも良いのかもしれません。

家というのは千差万別で、面白いものですね。
その内に捕まってしまったらすみません。

という想いに至り、私は気がついてしまいました。
この時にこそ使うべきコミュニケーションがあると。
心身共に充実して使うのは初めてです。
では参ります。

てへぺろ。