『奈良にて』

奈良県。
麗しき奈良県で記憶を無くした貴方。
仏滅のその日。
私の中のマントヒヒが、目覚めた。
ヒヒ、ヒヒ、という、声がする。
音ではない、声がする。
ということに気がついたのもその仏滅だった。
マーラー麺を初めて食べた夜。
スモモを初めてかじった夕方。
これはその仏滅ではない、
ただいずれも仏滅に経験したことだ。
これらを関連付ける事は可能でしょうか?
人生という道のりにおいて、
私にとってはいつの間にか決まっていた仏滅という周期にこのような事があった。
そこに意味を求めてしまう。
意味などいみじくも忌み嫌われて久しい今日この頃だ。
忘れようと思う。
振り替えればそんなに大した事は起こっていない。
マントヒヒが目覚めるというのも、
おそらく大いなる勘違いにすぎない。
興奮していたのだ。
いや。
だからこそ。
そこに意味を求めるの、か?
振り返った時に愛でる為に。
それだけのために。
今、この瞬間を生きていない、のだろうか。
奈良県。
惑わす町。
私にとっては、だ。