『イートイン、23時』

冷麺を食べてるおじさんがニコニコしていたのだ。
コンビニのイートインのコーナーに一人でいる人は、
大体が無表情かあるいはちょっと怒っているという印象だったので
そのおじさんの本当に幸せそうな顔に驚きを隠せない。
食べながら、
「むひょう!」
とさえ口に出して言ってしまっている。
私もこのコンビニの冷麺ならば何度でも食べたことがあるので知っている。
いや、そこまでではないはずだ。
たしかに美味しいのは美味しいけれども、
少なくとも私ならばあそこまで幸せそうにはしない。
きっと不機嫌そうに食べているだろう。
家で一人で食べていたって、
家族に囲まれ食べていたって、
あそこまで上機嫌にはなれない。
何か理由があるのだろうとは思う。
それが哀しい理由なのか温かい理由なのか腹立たしい理由なのかはわからない。
聞きたい。
本人に聞いてみるのが一番だ。
「美味しそうですね」
と。
だけど。
やはり聞けない。
恥ずかしいのだ。
このホンの少しの疑問を解消するためならば300円ぐらいは払っても良いと思っているぐらいの興味はあるのだ。
この300円を受け取って仕事をしてくれる職業さえあればとこの世を恨む事ぐらいしか私には出来ない。
こんなところでまた一つ私の限界を知る。
そして年を取り老いていく。
私はそれがただただ恐ろしい。