『ワンダーボーイ』

暗闇の中を私は走っていた。
もう5時間になるだろうか。
だが休まない。
私はワンダーボーイだからだ。
走り続けたところで何の生産性もない。
まして走っていることさえ誰も知らないだろう。
だが休まない。
私はワンダーボーイだからだ。
それだけが、それこそが目的だ。
自分が自分であることを自分に証明するために暗闇を走っている。
称賛も無いし批判も無い。
ああ、関心さえない。
欲してはいるが、
無いのだ。
だが走っている。
そして、休まない。
そこには事実しかない。
いや、事実さえない。
だが休まない。
休めないわけではない。
だが休まない。
ワンダーボーイだからだ。