『ワンダーボーイ、再び』

何者でもない私が月を見ながら流す涙は、
長い間偽物とみなされ、
忌み嫌われ、
洗濯物を干していると、
いつもいつの間にかビショビショに濡らされるなどの嫌がらせを受けていたのです。
あの頃。
だからいつも濡れた、
あるいは生乾きの服を着ていたので、
嫌な匂いを発していたので、
誰も私の周りにいたがりませんでした。

「おまんが、ええ奴、ちゅうのはわかるんじゃがのぉ。けんどもまぁ、のぉ・・・」

クラスメートの皆にもよくそう言われて遊びに誘われる事はありませんでした。
何者でもないということは、
無い、という事ではなく、
亡き者として存在する化物なのかもしれません。

「おまんが、ええ奴、ちゅうのはわかるんじゃがのぉ。けんどもまぁ、のぉ・・・」

目を伏せながらそう言う彼らは、
あるいは化け物としての私を恐れていたのではないでしょうか。
私の流す涙に畏敬な恐怖を感じ取っていたのでしょうか。

ならば抱き締めてあげようか。

示さなければわからない事もあるでしょう。
私には、愛があります。
あるのです。