『年月を経て』

ランランジェリーというダンスを教えてもらって、
ぼくは2週間かけてそれを覚えたのだった。
才能はなかったが時間はあった。
そして何よりランランジェリーに魅せられていた事が大きいんだろう。
夢中になったんだ。
軽やかなステップを踏むところがあって、そこが一番難しかったのだけど、決まるとやっぱりそこが一番気持ち良いし、周りも盛り上がるから、やりがいも感じられたものだ。

「恋人と一緒に踊るのも良いよ」

という声も各方面から聞く。
確かにそうだろう。
愛する人とランランジェリーを踊っている場面を想像、夢想するだけで心の奥がギュッとなった。

だから今も。
そうさ。
その時の残り香で楽しくやれているんだよ。
むしろ、そうなのさ。
「残り香だから良い」
そう思う時もあるよ。

ランランジェリー。
ランランジェニー。
ランランジュエリー。
そうやってステップアップしていく事も考えた。

けどステップアップには耐えられなかったんだ。
それは俺の、多分だけど生活が。

だから良いんだよ、今。
ちょうど。
ちょうどが一番良い。
過ぎるは良くない。

そうじゃないかな。
そう思う。