『そのおじさんについて』
京都は千本鞍馬口にいる天使、イル・メラリー君が今日もスーパー「ほていや」の前にいました。
メラリー君は、「ほていや」で買い物したのか、鳥ミンチ肉と玉ねぎの入ったビニール袋を片手に、恐るべき無表情でそこに立っていたのです。
「今からハンバーグ食べに行くねん、ごはんおかわり自由のとこやねん」
メラリー君はいつものように誰に聞かせるわけでもない独り言をそうやってブツブツ言っていました。
今日はハンバーグを食べに行くのか、と私はそこで日々の移ろいを感じるのです。
ある日は、
「定食屋さんに行くねん、ごはん大盛りにしてもらうねん」
だったり
「ラーメン食べに行くねん、きざんだ肉もいれるねん」
だったりするメラリー君。
いつもすれちがうばかりで私ごとき何もできません。
メラリー君は時がくると、背中に生えた翼を広げて家に帰っていきます。
その時に驚くほど良い匂いがするので、私はその時がくるまでじっとそのあたりで待っているのです。
この匂いは多分柔軟剤のファーファに似てるなぁと思います。
上空でメラリー君は息を吸い込み大きな声で
「ワン、ツー」
と言います。
これはいつも。
しかもいつもの独り言とちがってこれは下の民衆に向かって言っているような気がするのです。
なのに相変わらずの無表情に不安になるのです。
良い匂いと不安の組み合わせはやみつきになるものです。
「ワン、ツー」
って一体何なんだろう。
でもそんな事を言いだしたらメラリー君には他にもわからない事が多すぎます。
だから私はただそこにいて甘受することにしているのです。
いつもありがとうございます。
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