『能戸山です』

お宝が欲しかった能戸山くんであった。
先祖代々から伝わる能戸山家秘宝伝説、その謎の暗号によって秘されたこの地図を読み解けさえできれば、お宝はもう能戸山くんのものなのだ。
両親を亡くした事により、天涯孤独にはなったが、お宝の地図をこの若さ(16歳)で授かる事ができた。

「プラスマイナスでいえばプラスだ!」

能戸山くんはそう吠えた。
これが若さというものなのかもしれない。
まず能戸山くんは高校を中退すると就職をした。
肉体労働者になったのだ。
そしてお金を貯め始めた。
能戸山くんは決めたのだ。

「今から5年後、きっかり20歳までにお宝をゲットしてやる」

それまでの自分の人生は準備期間だ。
だからまずお金を貯め始めた。

何をするにしてもお金は大切だからだ。
両親も能戸山くんにそう言い続けてきた。

そうして両親もお宝探しに明け暮れ、
その最中に謎の死を遂げたのだ。

なんてこった。

なんてこっただぜ!

お金もそうだけど。
妻も必要なのかもしれん。

能戸山くんはそう思った。
働いてコンパして女性と付き合って、
そしてガンガン能戸山くんは幸せになっていった。

時が過ぎ。

20歳になって能戸山くんは結婚した。
そして思った。

「家庭を続けていくのが俺にとってのお宝だ」

と。
能戸山くんはキッチリお宝をゲットした。
そしてそのお宝の地図をソッと戸棚にしまった。

おわり。