「ランデヴー」

お土産を持って立っていた男。
40代の男でした。
九州旅行の帰り道。
彼は荒野に立っていたんです。
私もその時偶然荒野に立っていたんです。
男は私に言いました。

「これすごく美味しいから」

モシャリモシャリと二人でそのお土産を食べました。

甘い。
そして、それは甘すぎない食べ物だったのです。

だから、お母さんにも食べてもらいたいと強く思ったのです。
だから、

「これ、お母さんにも食べてもらいたいです」

と感想を言いました。
うっすら涙も流してしまいました。
想いが、少しあふれすぎてしまいました。
だから、なのでしょうか。
男は何も言いませんでした。
そして無表情でした。
それに何だか、何だかうっすらと腹が立ってしまいました。
すみません。

「これ、お母さんにも食べてもらいたいんですけど!」

もう一度今度は大きな声で言いました。

「あ?」

と男は言いました。

後はただ無言。
荒野に無言の男が二人立っていました。