「衝動」

夜。
豆を甘く煮たやつがフツフツと沸き立っている。
そして、
家の中でただ「フツフツ」という音だけが鳴っているのだ。
それなのに、

「うるさいっ」

と大きな声で言ってしまった。
夜中だったのでドキドキした。
我慢できないままに動いてしまう自分にゾッとする。

こんなのではダメだ。
ただじっと待とう、煮上がるまで。
「フツフツ」
という音もよく聞いたら心地良いかもしれない。
他の何かに集中していたら気にならなくなるかもしれない。
色々なもしもが頭に浮かんでは消え、そして、

「うるさいっ」

と、また我慢できずに言ってしまった。
夜中なのに2度も。

自分には豆を煮ることはできないのかもしれないという絶望感がうっすら背中にはりつく。
やめよう。
豆を煮るのはやめてコンビニで豆缶を買おうではないか。

ワキ毛の事を考えるのをやめてからもうずっと。
こんな調子だ。