「2015年」

日曜日だった。
家で一人お昼ご飯を食べていたところを暴漢に襲われてしまったのだ。
家に鍵をかけていなかったものだからあっという間にその男は私の家に侵入してきた。
私の部屋は6畳1間なもので暴漢が入ってきた瞬間、まさにその一瞬目が合って(※とはいえその暴漢はフルフェイスのメットをかぶっていたので目が合ったような気がしただけなのだが)、それからまたたく間に私の頭を黒い鉄の棒のようなもので殴りつけてきたのだ。
倒れ込んだ私を見下ろし、暴漢はさらにコタツの上に置いてあったサバの水煮の缶詰と白ご飯を間髪いれずに私に投げつけ、お気に入りの服 に水煮缶の汁が染み込んでいく。
それでもこの時点ではまだ私もさっきまでお昼ご飯を食べていた時の、

「もうちょっとおしょう油かけてみようかなぁ」

という呑気な気持ちのままだったので、何だか不思議な気分だった。
服に染み込んだ汁が冷たいなと感じとれるぐらいにやっと恐怖と痛みを感じられるようになった。
暴漢は部屋の中のあらゆる物をたたきこわしながら何やら物色し始めている。
大切なあれもこれもが失われていく中、このままではいけないと私は隙をついて思いきって服を脱いでワキ毛をみせた。
私にはこれしかなかった。

暴漢はただ黙って私のワキ毛をみつめていた(ように見えた)。
だから言った。

「すいません、世界で2位なんです」

暴漢は やはり、ただ黙って私のワキ毛をみつめていた(ように見えた)。
気まずい沈黙が続く。
どれぐらいの時間が続いたのか、私はいつの間にか失神していたようだ。
起きた時には暴漢はいなくなっていたし、大切な物もいくつか盗られていた。

悔しくて仕方がない。
やはり戸締りは大切だな、と思いながら再び服を着て警察に電話をかけた。