「岩戸山のコックピット」開催を記念して、特別編集でお届けします。
劇団衛星のメンバーそれぞれが、出演団体のあの人この人をマッチングする対談企画。
10月公演本番まで連載予定!
『岩戸山のコックピット』プレ企画・出演者クロストーク・リレー(6)後編 「音楽のコックピット」に出演するお2人に好きなCDを持ってきてもらって、その話を聞こうというのが主な企画の趣旨です。 今回は、その後編です。(できれば前編からご覧ください。) 対談してるメンバーは 横山祥子 オトヤ名曲デリバリー 吉見拓哉 劇団しようよ ファックジャパン 劇団衛星 の、三人です。 横山さんと吉見さんは、10月17日(木)19:30から「音楽のコックピット」に出演していただきます! それではまずは、前回の対談のアウトロ部分からお読み下さいませ。 横山「…たしかにそれは謎なんですよ。なんでそんなに哀しい歌を歌い続ける人が存在してるのかなぁって。なんでおじちゃんとおばちゃんはそんなに哀しい歌が好きなんかなって、私、最近想像するんですけど…。人間は人生の哀しさみたいな、『想ってたのに結婚できな かった』とか『大恋愛の末の離れ離れ』みたいなのにすごいシンパシーがあるというか。それは憧れですらなく」 ファック「うんうん」 横山「人間って色んな人の人生を知ってるのかしらって。そうでなければ演歌が流行るわけないんじゃないかなって」 ファック「北国の歌とかね…。雪がつもって云々とか、ハッて思いますね。行ったこと…」 横山「ないのに!」 ファック「ないんですよ」 横山「今日持ってこようと思ったCDがあって。なんか慰問みたいな形で、白梅町にある聖ヨゼフ整肢園に依頼されて行ったら、ちなみに先月来た人たちのやつですってCD-Rをもらって。クラッシックだったんですよ。」 +++++++++++++++ というのが前回までの対談の後半の流れでございました。 ここでの横山さんのおっしゃる「人間って色んな人の人生を知ってるのかしら」という言葉に、ぼくも(多分)吉見くんもズブっと前のめりになったのでした。 横山さんは話を続けます。 +++++++++++++++ 横山「今日持ってこようと思ったCDがあって。なんか慰問みたいな形で、白梅町にある聖ヨゼフ整肢園に依頼されて行ったら、『ちなみに先月来た人たちのやつです』ってCD-Rもらって。それがクラッシックだったんですよ。私、バイオリンやってるから勉強になると思って、なんとなく曲聴いてたら、奥で何か声がするんですよ。最初は赤ちゃんが泣いてるんかなと思って、あー、なんかのんびりした良いコンサートやな、と思ってたんですよ。でも良く聴いてみたら赤ん坊じゃなくて、そこの聖ヨゼフ整肢園の、障害を持ってる人たちが『イエーイ』みたいな感じで。」 2人「うーーーん。」 横山「曲が盛り上がってる、ここのピアノ良いなっていうところで『イエーイ』って言ってるんですよ! 何回も聴くと、やっぱりここぞというところで言ってるなと思って。その人たちはそれまでずっと寝たきりだったかもしれないけど、やっぱり、ある記憶じゃないけど…、知ってるんやなって…思いましたね。それで、そのCD持って来たかったんですけど、的外れだと思って…。」 ファック「ああ、そのCD、めっちゃ聞いてみたいじゃないか。」 吉見「聞きたいですねぇ。…ぼく、ライブハウスでライブやってても、めっちゃ狭いなぁって思う時があるんですよ。」 横山「私はもう、おじいさんおばあさんの前でやるお富さんの、煮詰まった真実な感じが…。でもそれは、私にお富さんをこえる作曲の能力がないだけですけど。だから、お富さんにかわる、若者がそうなれる歌はいっぱいあるんでしょうね。」 吉見「決まりごとじゃないけど、そういう、こう…その場では受けてるけど、他の場で受けないのが本当に良い音楽なのかっていうのがあって。ライブハウスにいっぱい出てて、何をステージに立った人間が求められてるかみたいなところが、何かしらその輪郭みたいなのが、最近出来てきて。」 横山「うん。」 吉見「いや、まだわからないんですけどね…。それを無意識的にも意識的にも…受けるようにじゃないけど、喜ばれるようにしていってる自分がいるなっていうのがあって。それが悪い事だと思ってやってないんですけど。それはそれで自分の技術とか経験として重ねていってる部分ではあるなって。」 ファック「うん。」 吉見「その輪郭がカチッと確定したといっても、それを他のところに持っていったら…本当にそれが良くなるのか(わからない)…。」 横山「…そうですね。」 吉見「いやでも、その輪郭の中でやりきってはる人はそういうその、他の場所に言っても楽しませれるやろなっていう人はいるんですよ、ね。」 横山「さっき(CDを聞いた)のバラード0曲の人(※ジョン・スペンサー)聞いた時に、客を煽るって(吉見くんから)聞いて、すごくひきつけられる話でした。この人は自分が歌う時に、そこにどんな色があったらいいのかを、輪郭を描く前に知ってるんだろうかってくらいのエネルギーでしたね。」 吉見「きっと、ジョンスペのライブは誰がみても、多分ね、それこそ耳の聞こえない方でも絶対に楽しいと思いますね。汗まみれになって、むちゃくちゃになってわめいてる様とか。弾き語りでも何を言ってるかわからなくても振動で楽しませる・・・多分そっちが正義なのかなっていう気がしますね。」 ファック「それじゃ、そろそろそれぞれ最後の曲にしようかと。」 吉見「なにかけましょうか。」 横山「(吉見くんのCDを見ながら)あ、私これ持ってる。」 吉見「あ、これ。ニック・ドレイクさん。これ死ぬほど聴いてた時期が…。えっと、ジェフ・バックリィのハレルヤ流そうかなと思うんですけど、最後なんで。…俺、この曲を聞く度に泣くっていう。」 ファック「えー、ここで泣かれたら嫌やわー。」 横山「泣いていただきましょう(笑)」 吉見「今は泣かへんと思うんですけど、一時期どの場面でいつ聴いても泣くっていう…。」 ![]() ♪ジェフ・バックリィ『ハレルヤ』 公式PV→https://www.youtube.com/watch?v=y8AWFf7EAc4 ファック「ああ、泣きそうやね!」 吉見「これね、ダメなんです。どこの場面で聴いても泣いてまう。ハレルヤっていう曲は元々レナード・コーエンっていう人の曲なんですけど。」 横山「レナード・コーエン」 吉見「ジェフ・バックリィがカバーしたんですけどね。30歳ぐらいで事故死してしまって、だから正式なアルバムは1枚だけしか出してないんですよ。」 (しばらく曲を聴く) 吉見「あかん。」 ファック「嫌やで。」 吉見「……」 2人「……」 吉見「…あかん。」 ファック「嫌やで、吉見くん泣く…。(横山さんとは)初対面やねんで。」 吉見「はい。」 ファック「初対面の人が泣かれたら。」 横山「もうちょっと(音量)大きしよか。」 2人「(笑)」 吉見「いや、我慢します。でも、色んな人にこの曲で泣いてるの目撃されてますね。たまたまいったライブハウスで初めてみた弾き語りの人がこの曲カバーしてて、それでもめっちゃ泣いてしもて、やめてくれよと思って。自分でカバーしようと思っても自分で歌いながら泣いてしまうから出来ないんですよね。」 吉見「この曲、もうライブ盤もあるんですけど、そこでお客さんが『ハレルヤ』ってフワッとみんなで歌ってて、それがもう…。」 横山「うん。」 (しばらく曲を聴く) ファック「うわ、すごい…。」 (しばらく曲を聴く) 横山「これ、内容も泣かせるんですか?」 吉見「なんかね、『救うのは光を見た聖人なんかじゃない、冷たく壊れたハレルヤだ』みたいな歌詞やったと思います、そんな崇高なもんじゃないみたいな…。この!今のハレルヤがあかん!」 ファック「…そっか。」 吉見「ダメ押しのように泣かすわぁ。…いや、こうして茶かさんと泣いてしまうな…。ありがとうございました。これもまた葬式で流してほしい曲シリーズですね。」 横山「いや冗談じゃないよ、葬式なんて、泣いて泣いて…。」 ファック「思い出にできない。」 吉見「冗談にならない。」 横山「冗談にできない、ほんまに寂しいやん。」 吉見「ハッハッハ、じゃあ次行きましょうか。」 横山「いや、この次は・・・。」 ファック「じゃあ、ぼくがガラッと雰囲気変えていきましょう! 演歌を持ってきてました。」 横山「(チラッとCDのジャケットを見て)…本当に演歌かな?)」 ![]() ♪秘密博士とエンペラーズ『昇り龍』 横山「すごーい、演歌だな。」 ファック「さっきとの違いといったら。」 横山「あー、ホッとした。怖かった。さっきのは刃の上を歩く気持ちで、これはCMに入った気分ですね(笑)」 吉見「大通りに出たみたいな。」 ファック「お風呂入ってるような。」 横山「冷房の効いた部屋から出たような、あったかいみたいな。…あ、これカラオケバージョンもある。」 吉見「ふふ、アホや。」 横山「これ、オリジナルですか?」 ファック「いや、このCDに入ってるのは全部カバーです。」 横山「へー、素晴らしいな。」 吉見「演歌っていうか、軍歌っぽいですね。」 横山「これ部屋で聞くんですか?」 ファック「聞きますよ(笑)、アガります!」 吉見「しかし、(さっきとは)すごい落差や…。」 ファック「うん、同じスピーカーから出てる音とは思えんなー。」 2人「(笑)」 横山「エネルギーのつまり具合ということにおいて、やっぱり演歌は素晴らしいですね。」 横山「大熊亘さんをご存知ですか?」 ファック「いやー、知らないです…。(横山さんの持ってきた大熊亘のCDを手にとって)でも俺好きそう…。いや、好きや。」 横山「なんでもうわかるんですか(笑)、活字読んでわかるわけないでしょ。」 ファック「いやぁ、タイトルとか。」 横山「ああ。この大熊亘さんも、チンドン屋やってますよ。」 ファック「これ、聞いていいですか?」 横山「わー、久しぶりだな、(このCD聴くの)5年ぶりぐらいだな。(ファックが12曲目をかけようとしてるのを見て)なんで12曲目なんですか。」 ファック「いや、なんとなくタイトルで選んでみました、『道草のために』。」 吉見「ええ、タイトルや。」 ![]() ♪大熊亘『道草のために』 吉見「かっこいいな。」 横山「ジメッとしてませんか?」 ファック「ジメッとしてないです。」 (曲をしばらく聴く) 吉見「あー、かっこええな。」 ファック「…やっぱり好きやな。」 横山「ジメッとしたやつに変えていいすか?私、ジメッとしたやつが好き。」 (曲を変える。たぶん1曲目) 吉見「あー、なんか夏のジメッとしてる感じですね。気温も湿度も高い曲。」 横山「あー、そうですね。これ、沖縄の離れ島を舞台にした映画のサントラなんです。」 2人「あーー。」 吉見「気温も湿度も高かったら、これ、あんまり嫌らしくないですね。いや、わからないですけど。」 (曲をしばらく聴く) 横山「…(小さな声で)はっ」 ファック「…好きなフレーズが出たんですか?」 横山「あ、はい。どうですかどうですか?」 ファック「うん。でもジメッとはしてないと思いますけどねー。」 横山「ああ、そうですか。割とこれはサラッとしてるかな」 吉見 ファック「いや、サラッとはしてないです」 横山「ハハハハ、ひどい(笑)」 ++++++++++ というわけで、対談は終わりました。 いやー、楽しかった! 久しぶりに音楽の話をしました。 演劇の話も楽しいけど、好きなCDを聞きながら喋るのがこんなに楽しいとは! 吉見くんとは面識があったけど、ちゃんと喋るのは初めてで。 横山さんにいたっては初対面。 吉見くんと横山さんも初対面で、 アルコール抜きでお茶だけ。 こんなの普通は盛り上がらないですけど、 2時間ずっとキャッキャッと盛り上がってました。 ……今冷静に振り返ると、もしかしたら盛り上がってたのはぼくだけのような気がしないでもないですが…。 でもまたこの対談、機会があったらやりたいです! 別にホームページに載せんでもええんやと思ってたり、個人的にでもまたやりたいです。 そんなんお二人がしたくないか…。 名残惜しいのですが、この辺で。 ありがとうございました。 そして皆さん。 10月17日(木)19:30の「音楽のコックピット」を是非お願いします! http://www.cockpit-ex.info/program.html#music | |