「モーさん」


パリッとした猛さんは、今日は会社に面接に行く。
正社員になりたいんだと言って泣いていた猛さん。
その気持ちを今日パリッとした格好で表現したのだ。

がんばれ猛さん
がんばれ猛さん

朝、ぼくがそう言って応援していたら猛さんは怒った。

「馬鹿にすんな」

怒りながら叩いてきた。
いたいいたい。
いたいからやめてほしい。
だからぼくも怒った。
だけど猛さんよりも怒りのレベルを上げて怒ろう、と。
そこを心掛けて怒った。
怒った怒った。
ものすごく怒った。
そうしたら猛さんはシュンとなって黙ってしまった。
きっとぼくが恐ろしかったのだろう。
顔色を失って黙った。
それからしばらくの沈黙ののち、

「時間がないから」

そう言って猛さんは面接に行ったのだ。
やはり猛さんは正社員になりたかったのだ。
もう一ヵ月も正社員になれない猛さんだ。
なりたい欲がきっとすごい大きいのだろう。

猛さんの背中。
パリッとした背中。
欲にまみれた背中。

それは美しかった。
美しかったのだ。

ぼくも明日面接に行こう!