『哀しい出会い、そして』


焼飯をつくっていたら、お腹が減っているのか満たされているのか、なんだかあんまりよくわからなくなってきました。
いつもより大盛りめいた感じでつくっていたので、見た目が壮大なだけに満たされるものがあったのかもしれません。
ぼくは焼飯だけはこだわってつくるので、この焼飯はとても美味しいはずなので、食べたい欲望はもの凄くあるのです。
もの凄くあるのです。
もの凄く、あるのです。
なのに、なぜ。
だめだ。
満たされはじめているのです。

もちろん無理をすれば食べられないことはありません。
ありませんが、そんな気持ちでこの焼飯を食べるのはとても哀しいのです。

どうすればもう一度食欲が戻ってくるのか。
おなかを殴ったりつねったり撫でたりこすったりしましたが、一向にお腹はへってきません。
未だなんだか満たされたような気分にあふれております。

焼飯は出来上がりを食べたい。
温め直した焼飯などぼくに言わせればそれはもう焼飯ではないのです。
では何か、と言われたら『かつて焼飯だった食べ物』でしかないのです。

ああ。
ああ!

後はショウユをかけるだけ。
かけるだけで出来上がってしまいます。

食べたい。
食べたいのに満たされている。

この焼飯に出会いたい。
でもその出会いには必然的に別れが待っているのです。

哀しい。
後はショウユをかけるだけです。