「実を申せば」


「好きです」
と、あなたに言われました。
「おでんが好きです」
であればあなたからこれまでに何度も告白されたことがありましたし、それ以外にも何人もの人の、
「おでんが好きです」
という言葉を私は聞いたことがあります。
ですが先日のあの「好きです」は、おでんなどの食物関係の時に向けられる熱量とは一味違ったものが感じられたのでした。

一言であの時のあなたを申し上げるならば、
「汗」
でしょうか。
一体何があったのかは知りませんが、とにかくあなたは私の前に人類史上においてももしかしたらこれ以上はなかったのではないかというほど汗だくのビチョビチョで現れたのでした。
あの時、二つの意味であなたには熱がこもっていました。
正直に言えば、不愉快な状態であったと言えるでしょう。
だから私はあなたから
「好きです」
と言われてもいまひとつテンションが上がらなかったのです。

とても、残念でした。