「上京前夜」

彼女のことが好きだ

うん

間違いない

愛している

彼女の事を想うと

こんなにも切ないし

こんなにも苦しい

そして

こんなにも勃起してしまう

ああ

恥ずかしい

恥ずかしいけれど

おさえられない

この気持ち

この身体

これは紛れもなく

うん

愛だ

それなのに

帰り道

彼女はぼくに聞いてくる

「愛してる?」

答えない変わりに

ぼくは態度で示す

すると彼女は

何も言わなくなり

頬を赤くして

黙ってうつむくのだった

ぼくも頬を赤く染め

そしてやっぱり

勃起してしまう

ああ

恥ずかしい

黙ってうつむいた

夕暮れの帰り道

ぼくらはうつむいていた

前から歩いてきた

買い物帰りの主婦が

「キャッ」

と叫ぶまで

ぼくらは黙ってうつむいていた

その時

ぼくは静かに

しかし確かな勢いで

勃起していたのだ

ああ

恥ずかしい

早く家に帰りたい