「サディスファクション」

跳び箱をみつめている男がいる

ああ

この男

なんていやらしい目つきをするのだろう

ただならぬ想いと

ただならぬ情念が

全力で

あの跳び箱に注がれている

これはもう

ヴァーチャルレイプじゃないか

「止めろ」

気が付いたら

叫んでいた

「跳び箱をそんな目でみるのは、もう止めろ」

気が付いたら

涙も一緒にこぼれ落ちた

しかし

男は

そんな私の言葉など

まるで聞こえていないかのような素振りで

跳び箱めがけて走りはじめた

まさか

いやきっとそうだ

飛ぶ気だ

飛ぶ気なんだ

男は跳び箱を飛ぶ気で走り始めた

ということは

つまりあれは

 

助走だ!