「メガネ」

私がメガネ屋に勤めるようになって、早いもので、もう5年近くが過ぎようとしています。
振り替えってみれば、この5年間、様々なことがありました。

メガネ、たくさん売りました。

メガネ、たくさん修理しました。

メガネ、たくさんお薦めしました。

メガネ
メガネ
メガネ
毎日がまるでメガネ祭りのような、
そんなメガネ三昧の生活を
5年間送ってきました。

視力?
ええ、たくさん計りました。

老若男女関係なく、一日にもう何人もの人の視力を計るんです。
けれど、あんなに計った視力なのに、今も覚えているのは…一人だけ。

覚えているのは、安子の視力だけです。

安子!
ああ、安子!

安子の視力を初めて計った時、
その時ぼくは
恋におちたんです。

右が0、4
左も0、4
の安子
ああ、安子!

ぼくは両目1、0だ。

相性はバツグンだと思わないかい?

そう言ったら君は
優しく笑ってくれました。

ぼくはプロポーズのつもりで

「君のメガネは、もはやぼくのものさ。少なくともぼくはそう思ってるんだ」

と言っても、今一つピンときてくれませんでした。

残念だったけど
でも安子の気持ちもよくわかる。
そんな夜も経験しました。
5年間本当にありがとうございました。
結婚してからも頑張ります。
よろしくお願いします。