「恥を取り戻すために」
垢がたまったままだったので、私は故郷に錦を飾れませんでした。
あれだけ何度も、お風呂に入ってさっぱりした方が良いと、様々な方から言われていたのにもかかわらず、ついうっかりとそのまま帰ってしまったのです。
だから、
「君は汚い」
と、駅に着くなり、駅員さんに言われてしまったのです。
どうやら遠くにいた駅員さんたちからも
「おや、なんだか臭いぞ」
という声がチラリホラリとあがっていたようです。
まったくもって申し訳ないやら恥ずかしいやらで、私の頬は赤く染まりました。
けれど、
垢のたまってしまった今の私のこの有様では、もはやその判別もうまく着かないのです。
ああ、なんということでしょう!
「人間、恥を忘れたらおしまいさ」
これは、以前私が10歳ほど年下の女性とセックスをした後に、何か格好良いことを言いたくなり、まったり感を意識しつつ、ベッドの上でつぶやいた言葉です。
しかし
この時まさか、自分が世間に対して恥ずかしがることができなくなるとは、まったく夢にも思っていませんでした。
ちなみにこの時の女性は、その時心なしか頬を赤く染め
「だよね…」
と言いながら、私の腕に強く抱きついてきましたので、この時の「格好良いことを言う」という私の試み、これはうまくいったのではないかと、このように自負しております(余談)。
「どうすれば良いのだろうか。私はもうおしまいなのか」
絶望的な気分で、私は自分に問い掛けます。
どうすれば良いか、 しかし私は知ってはいるのです。
まずお風呂に入るのです。
うっかりせず、 お風呂に入れば良いのです。
それだけなのです。わかってはいるのです。
けれど、簡単なことのようにみえて、しかしどうしてもついついうっかりしてしまうのであります。
畜生、うっかりめ。
いえ、もちろん私のハートの問題です。
うっかりのせいにしているわけではないのですが、ついうっかりうっかりに文句を言ってしまうところが私にはあります。
反省しなければなりません。
このままいつまでたってもうっかりしてたら、 いつまでたっても垢がたまったままなのです。 恥ずかしい。
けれど、垢のたまった今の私には、恥ずかしさを表現することできないのです。
こんなに恥ずかしいのに。
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