「歌の力」

 電車の中でウォークマンを聞いていると、とても面白いです。
  加山雄三の「君といつまでも」を聞いていると、普段は不愉快な存在でしかないカップルが途端にとても微笑ましく思えてくるから不思議です。
  学校帰りらしき男子校生二人組みでさえ、恋人以外の何者にも見えなくなってしまうのですから、加山の歌の力はまったくもって本物であります。
  しかし面白いもので、この加山の歌の後に尾崎紀世彦の「また会う日まで」が入っていると、さっきまであんなに微笑ましかったカップルも、もうすでに別れてしまった二人の楽しかった「あの頃の思い出」にしか見えなくなり、イチャつけばイチャつくほど、見ているこちらは切なくなってしまうのです。
  電車の中で密着しているカップルを見ていて切なくなったのは初めてで、やはり尾崎の歌の力も本物だと思いました。
  赤ん坊を抱いている幸せそうな若い奥さんも、やしきたかじんの「やっぱすきやねん」を聞きながら見てしまうと、哀しすぎて見ていられなくなります。そんな男の事は早く忘れてしまえよ!と、思わずアツくなってしまうほどです。
  やしき君の歌の力も本物である、と言わざるをえません。