「音楽の話」

 美輪明宏の音楽はどういう状況の時に聞けばハマるのか、という問題があります。
  聞いていると、あまりにも美輪明宏ワールドが広がっていく、この濃過ぎる音楽は、少なくとも通勤、通学の行き帰りにウォークマンで聞けるような、そういう日常生活に添うような類いのものではない。ましてやスキー場のゲレンデには多分、未来永劫流れないような物であります。
  そういった軽快さとはかけはなれた位置に、美輪は立っているはずなのです。いや、確かに美輪の曲には、スキー場にはかかせないであろう、恋人気分を盛り上げるロマンチックな部分がないわけではありません。しかしあまりにも情念が込められ過ぎてしまっているのです。シュプールを描くにはいささか重過ぎるのです。なにやらそのまま心中してしまいそうな勢いなのであります。
  情念がこもっているという意味では、プロレスラーや格闘家の入場曲には最適なのではないだろうかとも思いましたが、どうでしょうか。筋肉質な男が美輪の曲と共に現れたならば、やはり何かを想像せざるをえないのではないでしょうか。もう試合そのものが別の意味を持って見えてきてしまいそうです。なんと不浄なマウントポジションでしょうか。そうなると、やはりこれはあまり良くないのかもしれません。
  それでいろいろ試してみた結果、アダルトビデオを、音を消して美輪の曲をかけながら見ていると、金持ちの大人の遊びをしているような気分になる。という事はわかったのです。
  それ以上の事はぼくにはつかめませんでした。
  美輪さんは奥が深いです。