「悩み」

先日からぼくは、隙あらばフルーツの事ばかりを考えてしまうようになった。
最初は、おそばを食べているのにもかかわらず、その実、心の内ではグレープに想いをはせているといった程度であったのに、段々と日常生活にも軽い破綻が起きてしまうほど、自分の中でフルーツの事を想う割合がふえていってしまった。さすがに不安になって知人に相談してみたところ、健全な男性ならば誰しも一度は通る道だと言われて少し安心した。
そしてその知人は、私を抱き締めてくれたので、私はますます安心した。
「大丈夫だ。だからお前は何も心配するな」
知人があまりにも熱っぽくぼくにそう語るので、今度はだんだんと不安になってくるのだから、人間は不思議なものだ。
フルーツの事が頭から離れない。
知人もぼくの体をなかなか離さない。
困った事になってしまった、注意しなければ。これからは知人にうっかり悩みを話せない。