「ウェディング」

僕には結婚を考えている女性がいます。
その娘のことがとても好きで好きでたまらなくて愛していて離したくなくて、もう一生大切にしようと…つまりその、結婚しようと思っているんです。

 でも。

でも僕にはそんな資格がありません。
僕は、出会った時から彼女に、彼女に対して隠し事をしているんです。
「嘘」を、ついているんです。
つきたくてついているわけではありません。僕だって何度も打ち明けようとしました。今日こそ全て話してしまおうと、何もかもをぶちまけてしまおうと、何度も何度も、何度も思いました。
でも…駄目でした。
今の仕事を捨ててしまい、同時に彼女の夢を全て奪い取ってしまうかもしれない。
そう考えると恐ろしくて、僕はいつも言い出せないのです。 僕は、負け犬です。
いやこの場合、負けネズミといえばいいのでしょうか。
「素人さんとは難しいよ、やっぱり」
そう語る、すでに結婚している今林さんは、職場結婚であります。
役柄上、恋人同士を年間通して演じ続けていると、そのうち本気になってしまう。
その気持ち、大変よくわかりますし、実際同じ職種同士の結婚は多いのです。
自分の正体を打ち明ける事ができるし、同じ悩みも共有できて、職場では恋人同士。
好きにならない方がおかしい。
僕だって、彼女に出会っていなければ、ここの女性と結婚していたと思います。
でも、出会ってしまったんです。
世界中に一匹しかいないといわれてる、みんなの憧れの的が、実は僕だという事を、彼女は受け入れる事ができるのでしょうか。
よりによって彼女は、大のディズニー好きなんです。
言いたい。
でも言えばクビであります。
やっぱり僕にはミニーちゃんがお似合いなのでしょうか。
ああ。