「閑話休題」

挨拶を教えてもらうようになって半年がたつ。
けれども私の覚えた挨拶はというと、
「いってきます」
「ただいま」
「こんにちは」
「お先に失礼します」
の四つだけなのである。
挨拶歴十五年ぼベテラン、東大阪支部長の樽崎さんは
「知れば知るほど深みをましていくのが挨拶というもの。私は今でも自分のこんにちはに疑問を持っています。焦らずにゆっくりと覚えていけばいいんですよ」
と、あたたかい声をかけてくださったのだが、しかしやはり早くステップアップして樽崎さんの代名詞的挨拶、
「髪切った?」
を言いたくてたまらないのも事実なのである。
樽崎さんの
「髪切った?」
には派手さはないが、キャリアを重ねた分の重みがある。
会員の人たちに聞いてもやはり樽崎さんの
「髪切った?」
は人気があるようだ。
元々運動不足を痛感して何気に始めた挨拶だが、今では私の生活のなかでも大きな存在になっている。結婚していなければプロを目指していたかもしれない。
とにかく近い目標としては
「おはよう」
を。そしてゆくゆくは
「おはようのチュー」
を覚えるのだ。
独身の樽崎さんには決して使う事のできない挨拶だ。