「ラグビー部物語8」

五月の地獄のゴールデンウィークが過ぎ、さらに屈辱の修学旅行も終わり、さらに新一年生の正式入部も決まり、いよいよ新チームとして一年間が始まろうとしていた。
そんなぼくらがまず最初におこなったのが部室の移動であった。
当時ラグビー部には部室が2つもあり、三年生が引退した後は一年と二年が一部屋ずつ使えるという恵まれた環境にいたのだ。
ぼくらもそれまでは一部屋ずつ使っていたのだが、新一年生が入ってくるとそれでもやはり二つの部室では狭い。
当然部室は三つには増えない。
どうしていたのか。
正式入部までは狭いながらもぼくら二年の部室で一年と共にギュウギュウになって着替えていたが、それも五月までの話しである。
修学旅行から帰ってくるとほぼ同時に部室から出て行かされ、外で着替える事になるのである。
そう、二年生が。
一年、ではなく二年が、である。
修学旅行から帰ってきた二年生は部室から荷物を持って一年生に部屋をあけわたさなければならず、それからは食堂の脇にあるかろうじて屋根のある小さなスペースで着替える事になるのだ。
そこには誰かが拾ってきたのであろう、ボロボロのベンチと棚が置いてあり、ぼくらはそこで、太陽の光を浴びながら、パンツを脱いだりスパッツをはいたりしなければならないのだ。
なぜ。
しかしそれがラグビー部の伝統であった。
土曜など、食堂でご飯食べてる奴らの片隅でパンツを脱いだりスパッツをはいたりしていたのである。