「ラグビー部物語6」

謹慎も明け、ぼくたちは正に身も心も入れ替え、きたる来年の秋の全国高校ラグビー全国大会予選に向けて再スタートを切る事になった。
練習も去年より厳しくなり、みんな気合いも入っていた。ぼくもみんなに負けじと、身体を大きくするために毎朝筋トレにはげんでいた。さらに筋トレだけではなく、身長を伸ばすために雑誌の広告によく載っている信じられないくらい身長が伸びると噂の身長法にまで手をのばしていた。
毎日練習終わりに柔軟とコブラのポーズをとるほど気合いが入っていたのだ。
そして合宿である。
例年夏にしか行われていなかった合宿をなんと春にも行うというのである。
場所は名古屋。
顧問の先生がこの学校にくる2年前まで教えていた学校との合同合宿であった。
ランニングをすれば相手の学校の奴らよりも早く走ろうとするし、スクラムを組めば少しでも相手を押そうとするしと、自然と対抗心みたいなものが芽生えていた。
その対抗心を抱えたままの、最終日、である。なんと最後に練習試合を、という事になったのだ。
当然燃える。
当然勝つ気まんまんである。
が、負けた。
ほぼ完敗であった。
練習の時には感じられなかったのに、試合では力の差を痛感させられたのだ。
試合のレフリーは先生がしていたのだが、
「なんやその身体の姿勢は!」
と試合中にも関わらずぼくはそのレフリーである先生に蹴られたりしていた。
とても情けなく、悔しくて、試合が終わって、相手の高校が引き上げていった後もぼくらはそのグラウンドに座りこんだままだった。
すると先生がやってきて、タックルバッグ(タックルの衝撃を吸収するボクシングでいうところのミット)を持ってこう言った。
「おいお前ら、俺を倒してから宿舎に帰れ!」