「ラグビー部物語2」

初めてボクがラグビーの試合に出たのは高校一年の夏、長野県の菅平という所へ合宿へ行った時の事だ。
菅平という場所はラグビーの合宿の聖地のような所なので、全国の高校、大学、社会人を問わずそれこそ何百ものチームが集まってくるので練習試合の相手には事欠かないのだ。ゆえに合宿の間中は練習試合をやりまくりなので、一年生のデビュー戦はこの場所である事が多いのだ。
「ジャージに着替えとけ」
先生から試合前にそんな事を言われてただでさえ動揺しているのに、試合前のアップ中に三年生の先輩が、
「ぅわ痛ーっ」
という大絶叫と共に頭を押さえながら倒れてしまい、救急車で運ばれてしまったのだ。
「どうなってしまうんだ・・・」
それによりボクの不安と緊張は最大限にまで高まってしまって、その後、何がどうなったのかはあまり覚えていない。
ただメチャクチャで、迷惑しかかけなかったのだけは恥ずかしさと共に覚えている。
そして、倒れた先輩はというと、スグに戻って来た。倒れたのは頭をハチに刺されたからであったためだ。
「お前でもアレはほんまにメチャクチャ痛いねんて、ほんまやねんて、ほんまやぞ」そう語る先輩を目の当たりにして、初めて試合に出た事よりもハチの恐ろしさの方が、実はなんとなく覚えているのである。