「ラグビー部物語」

ぼくが高校に入ってラグビーを始めるようになったのには、もちろん様々な要因があるのだが、その中の一つに練習が楽そう、という入部動機があった事は否定できない。
中学生当時、柔道部だったぼくは、毎日続く本当にハードな練習に身も心もクタクタになっていた。そんな憂鬱な気分の中、練習前の道場の窓から見えるラグビー部員たちのなんと楽しそうな事か!パス回しをしながらキャッキャッキャッキャッと戯れる姿に、ぼくは憧れと羨望の眼差しを送っていたのだった。
しかし、である。
中学生のぼくのなんと頭の悪い事か。
ぼくが柔道の練習前に見ていたその風景は、当然ラグビー部にとっても練習前で、いわゆるアップをしていたのにすぎなかったのである。
「そりゃ楽しそうだよ!」
「シンドクなさそうだよ!」
その後、何度そんなツッコミを自分自身に入れた事だろうか。
ぼくが柔道場でヒーヒー言ってる頃、ラグビー部員たちはグラウンドでゼーゼー言いながらぼろ雑巾の様になっていたという事をぼくはその後、身を持って知る事になるのである。