「思い出のカラオケ」

中学の修学旅行に行った時にぼくらは、バスの中でカラオケを歌っていた。
しかも恐ろしいのはその時なんとクラス全員、一人一曲必ず何か歌う事が義務づ
けられていたのだ。実際問題、ぼくはこの修学旅行で初めてカラオケを歌った。
カラオケの恐ろしさやマナーなど何も知らなかったぼくはあろうことか、さだま
さしを歌ってしまったのだ。
しかも「関白宣言」をだ。
長すぎる歌に、リズム感のなさすぎる歌声。ダブルパンチでバスの中の空気はと
たんに澱んでいくのをぼくは肌でビンビンに感じていた。当初あった手拍子もあ
っという間に止み、窓の外の風景を眺める者が続出していた。
「死んでしまうかもしれない」
中学生のナイーブなハートにはあまりにもその現場は過酷なものであっただけに
、その恐怖というものを支える事など到底無理な相談だった。
「帰りたい」
楽しい修学旅行も一瞬にして砕け散ってしまった。
岡田君みたいにボウイの「オンリーユー」を歌えば良かったのだろうか、それと
もやはり童謡でお茶を濁すべきだったのだろうか。様々な後悔がぼくの頭の中を
かけめぐっていた。
でも関白宣言はしみじみとした良い曲ですので、良かったらどうぞ。