『黒木陽子の百人一首を斬る!』
(略して『陽子の百人斬り!』)
【第二十ニ回】
【原文】
吹くからに 秋の草木の しをるれば
むべ山風を 嵐といふらむ
[文屋康秀]
【読み】
(ふくからに あきのくさきの しおるれば
むべやまかぜを あらしというらん)
【通釈】
吹くと同時に、秋の草木がしおれるので、なるほど、それで山風を嵐というのであろう。
【斬り!】
シンプル。
次の皿を盗るとか、まぁ、そんなかんじ。
『むべ(訳:なるほど。)』ということばの響きが、なんかいい感じ。
一昔前に『トリビアの泉』の「へぇ」がはやったけれど、当時もきっと流行ったに違いない。
「坂の街神戸の人間が京都に来ると、坂を坂と感じられない」
「むべ!」
「むべ!むべ!むべ!むべ!」
「50むべ!」
さらに一昔前なら、
「むべ!the わーるど」
ただし、ちょっと言いにくい。
「むべぇ〜。(なるほどなぁ〜)」
・・・当時の人は、本当にこんな風に話していたのかねぇ〜?
なんか、「む」の発音って、口を閉じて発音するから、ちょっと勢いが出ちゃうね。
難しい漢字をあててそう。
「武琶!」とか。
「ウムッ!」っぽい。
ことば書きには、歌会で詠んだ歌、となっているけれども、想像するのはこんな風景。
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場:文屋康秀、家庭教師先にて。
文屋:吹いてるそばから、草木がしおれていきますやろ?
(進学塾に通う子どものような純粋な眼差しで、姉と幼い弟が、先生を見つめている。)
文屋:むべ!
(幼い姉弟の注目がぐぐっと集まる。)
文屋:山風を嵐というらん!
姉弟:・・・(顔を見合わせて、宮崎駿のアニメのように笑い出す)プッ!あはははっははははっ!
姉:むべ!
弟:山風を・・・?
弟:あらしというらん!
姉:むべ!
弟:むべ!
姉:むべ!
弟:むべ!
姉弟:あはははッははははッ(ひとしきり笑う)
文屋:さ。これで今日の講義はおしまいっ!さ、遊んで来なされ!
姉弟:(ぴょこんと礼をする)先生、ありがとうございました〜!!
文屋:ははははは。(礼をする)
(姉弟、弾けたように、縁側から飛び出す。)
姉:むべ!
弟:むべ!
姉弟:あはははッははははッ
(その光景をにこやかに見守る文屋)
ーーーーーーー
こんな感じ。
ちなみに私は、受験戦争にはげむ幼児〜小学生の様子をテレビなどで観る度に、その純粋な瞳にきゅ〜んとなる派。
世界の貧しい地域の子どもの瞳も純粋だと思うけれど、日本の子どもの瞳も純粋だよな、と思う。すべからく、子どもが頑張っている瞳は純粋だ。
あ、関係ないですね。
むべっ!(なんのこっちゃ)
ま、今回はそんな感じです。
(現代語訳は、旺文社 古語辞典[改訂新版]から引用しました。)
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