『黒木陽子の百人一首を斬る!』
(略して『陽子の百人斬り!』)

【第十七回】

ちはやぶる 神代も聞かず 龍田川
唐紅に 水くくるとは
[在原業平朝臣]

●読み
(ちはやぶるかみよもきかずたつたがわ
からくれないに みずくくるとは)

●意味
さまざまの不思議なことが起こっていたという神代でさえも、こんなことは聞いたことがない。(一面に紅葉が散り浮いて流れ)龍田川が真紅色に水をしぼり染めにしているということは。

きゃあ〜
業平〜。

学生時代は、はしにも棒にも引っかからなかったこの歌。
私、さっぱりこの歌の意味がわかってなかってん。
子どもやってん。

さあ。大人になった今!
解説しましょう!この歌が歌うすばらしい眺めを!

龍田川に、こう、紅葉した葉っぱがいっぱい落ちてて、
ああ、川が反物みたいや〜
唐紅の反物。
川のみずがくくられて絞り染めにされてる〜
神さんの時代でも、こんなんなかったんちゃう、
ってくらいキレイ〜

ん?わからへん?
あら?
いやいやいや。
皆様は、奇麗な織物を目にしたことがあるだろうか。(私はあんまり無い。)
そして、美しい紅葉の景色を目にしたことがありますでしょうか。

そんな時、口に出る言葉と言えば。
「うぉっ!めっちゃすごい!」
「キレイ!」
せいぜい、
「うわわ〜川が、じゅじゅじゅ紅葉のじゅうたんみたいになってる〜」
どまりではないかしら。
うか
あの、美しい景色を見た時の感動を、
美しい言葉にできない、凡人の悲しさよ!!
それでも、まだ腕に自信のある人は、
カメラに納めたり、ビデオに撮ってハイビジョンで眺めたり、
絵に描いたり、どうにかこうにかするのでしょうが・・・
あるいは、坂口修一さんや、紙もっちんのように、
話芸をつくして、感動を伝えるのでしょうが、

私のように手段の無い人間は、他人に話したって
「へ〜良かったね」なんて哀れみっぽい視線を投げ掛けられて
がっかり千万でございます。

そこにくると、業平ったら

「唐紅に水くくるとは」

ですよ!
きゃああ〜
《水》を《くくる》なんて、なんて素敵な言い方なんでしょう。
しかも!しかも!これは、屏風の絵を見て読んだ歌だと言うじゃないですか!

きゃああ〜
素敵〜。
この私の業平に対するミーハー心を
どう言えばいいのでしょうか。

「ふ〜ん、そう・・・黒木さん、大丈夫?」
と、読んでいる皆さんの顔が浮かびます。

がっかり。
自分にがっかりよ。

さて次回は・・・
【第十八番:住の江の岸による波・・・】
夢です。次回は夢です。平安貴族は夢が大好きよ!「夢に異性が出てくる」=「その人が自分のことを想っている」だからね〜。

(現代語訳は、中央図書「古典の学習【小倉百人一首】」宗政五十緒著」から引用しました。)




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