『黒木陽子の百人一首を斬る!』
(略して『陽子の百人斬り!』)
【第十五回】
君がため 春の野に出でて 若菜摘む
我が衣手に 雪は降りつつ
[光孝天皇]
●読み
(きみがため はるののにいでて わかなつむ
わがころもでに ゆきはふりつつ)
●意味
あなたに差し上げるために、春の野に出て若菜を摘んでいる私の着物の袖に、雪がしきりに振りつづいている
はいっ!
前回のコバルト文庫にちっとも反応が無かったことに、がっかりなんてしてなくってよ!
おかしい。
掲示板に「私も私も!」と反応が書き込まれるはずだったのに。
(自惚れ過ぎ・・・恥ずかしいよ、私・・。)
女子の基本だと思っていたのに。あんなに流行っていたのは、私の中学だけか?
そんなことはさておき。う〜ん。この歌もいいですねえ。優雅。
春なのに雪なの?ノンノン。春=正月ですのよ、ホホホ。
なぜに冬じゃないのか。
君がため冬の野に出でて若菜摘む我が衣手に雪はふりつつ・・・。
寒っ!寒いわ!
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『君がため』
-キャスト-
山下…高倉健
ミツコ…松たか子
(男、極寒の荒野へ、幻の薬草を取りに行く)
山下 「わしに出来るのは・・・これくらいですけん・・・」
ミツコ 「山下さん・・・」
山下 「・・・。」
(吹雪の中、小屋を背にする男。)
(すぐにその姿はみえなくなってしまう。)
ミツコ「山下さん・・・」
(木戸にすがりつく女。)
(荒野を行く男。深く顔に刻まれた皺に容赦なくふきつける冬風。)
(身にまとった毛皮の一本一本に霜が降りる。)
山下「・・・。」
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なんなんだ。喋れよ、高倉健!うもうん!
そんな光景が思わず見えてしまうじゃないの!ノンノン!
この歌は、もちのロンロンそんな歌じゃないの!
正月の優しい雪が、正月の新しい着物の袖にふっくらと溶けて行く・・・。
いいねえ。
なによりも、「君がため」ってのがいい。
第一回の
「我が衣手は露にぬれつつ・・」
とも、ちょっと比べてみて欲しい。
あの歌は、「秋」「かりほの庵」「露」=わびしい感。
「勝手に濡れてろ」ってなもんでしたね。
そう、田中邦衛の哀愁がよく出ていた歌でした。
この歌は、「君がため」と、相手が出て来たことと、
「春」「雪」「若菜」という言葉たちが、
うまいこと、若いふたりの清々しさを高めてくれております。
いいね。いい。美しい。
コマーシャルフィルムになりそうだわね。
さて次回は・・・
【第十六番:立ちわかれいなばの山の・・・】
はい。行平ね。
この、つぎの業平がまたいいのよ。
十七番をさきにやっちゃだめですよね。
この歌も確か面白い歌やったんじゃないかとは思うんだけれどね。
(現代語訳は、中央図書「古典の学習【小倉百人一首】」宗政五十緒著」から引用しました。)
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