『黒木陽子の百人一首を斬る!』
(略して『陽子の百人斬り!』)

【第十一回】

わたの原八十島かけて漕ぎ出ぬと
人には告げよ海人の釣り舟
[参議 篁]

●読み
(わたのはらやそしまかけてこぎいでぬと
ひとにはつげよあまのつりぶね)

●意味
「海原はるかに、数多くの島々をめざして、漕ぎ出して行った」と、私の親しい都の人たちに告げておくれ、そこにいる海人の釣り舟よ。

これは、左遷時の歌です。自分は、華やかな都を離れて、隠岐(鳥取の北方の島ですね)に流される。悔しさと惨めさと寂しさをかみしめて、浪々と歌う・・・。

はい。しかし。黒木陽子は、意地悪に斬ってみたいと思います。

ここはひとつ、漁師の気持ちになっていただきたい。

彼は、その日、元気に漁に出ていた。
この海は俺の海。
今日も潮風が俺を呼んでいるぜ!

そのとき、そこを通りかかった一艘の舟。
高貴な人を乗せているのだろう。彼が乗っている舟とは違い、豪奢で華奢な都風の舟である。
「気取りやがってよぅ・・・」
そして聞こえて来たのがこの歌。

♪人には告げよ〜海人の釣り舟・・・

・・・。
ジョイフル気分台無し。

というよりなんだ。
それが人に物を頼む態度かい?
釣り舟ってなんだ釣り舟って。俺に頼めよ!
馬鹿にするな!
俺は毎日この海に漁に出てるんだよ!

しかもこの篁、2年後には都に戻ってくるのです。

♪やっほっほ〜い。

「おいおい・・・戻って来てるよ。」
あきれ顔の漁師。

まぁ、そんな感じで。
悲劇は生活にかなわない。
ちょっぴり意地悪な黒木でした。

さて次回は・・・
【第十一番:天つ風雲の通ひ路・・・】
僧侶の読む歌に乙女登場!? あれれ?と、坊主めくりの際に誰もが思ったことでしょう。ねえ。

(現代語訳は、中央図書「古典の学習【小倉百人一首】」宗政五十緒著」から引用しました。)


 

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