『黒木陽子の百人一首を斬る!』
(略して『陽子の百人斬り!』)
【第五回】
奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の
声聞く時ぞ秋は悲しき
[猿丸太夫]
●読み
(おくやまにもみじふみわけなくしかの
こえきくときぞあきはかなしき)
●意味
山の奥で(地面に散り敷いた)紅葉を踏み分けて鳴いている鹿の声を聞くその時は、秋はさらに悲しいものだ、ということが感ぜられる。
う〜ん。秋の歌です。ところで今は新緑真っ盛り。ちょっとねえ。
今回はちょっと見送り。というわけにもいかず。(4年にわたる大連載の予定なのでって四年経ったら32歳かぁ・・・。そんなんどうでもいいやん。)むむむ・・・だいたい、鹿の声なんて聞いたことも無いわ。「ピギャー」とか、そんなん?「鹿鳴」ってのは、漢詩の世界では有名らしいが。
制作の福ちゃんにちょっと相談に乗ってもらいました。
福「なんで鹿なんですかね」
黒「犬やったら?」
福「想像できないですね」
黒「熊は?」
福「冬眠に入る感じですね」
黒「う〜ん」
福「鳥はどうですか?キジとか」
黒「紅葉ふみわける音が、なんかペタペタしてそう。」
福「なるほど」
・・・。ていうか、鹿なものは鹿なわけで。
そうだ!ここは、新たな事実関係を勝手に作ってみましょう。何か分かるかも。
この男は、子供を離婚した奥さんに取られた。
そして奥さんは、なかなか息子に会わせてくれない。
養育費は毎月きちんと10万円口座振り込みしている。
あれから6か月。季節は秋。
今日は、振り込み日。外回りの営業の際、息子名義の口座に振り込んだのだった。
そして、誰もいないマンションに帰ってひとりビールを空けてソファーで飲んでいる。
スーツの肩にはどこで付けたのか、一枚の紅葉が。手に取ってゴミ箱に捨てる。
窓の外には、自分の物だけの洗濯物がゆれている。
そんなとき・・・
家の裏手にある小山からガサガサという音が。
さて、そこにいたのは?
1、犬
2、熊
3、キジ
4、鹿
正解:4、鹿・・・え?鹿かよ!!と、思って、懐中電灯の光を向けると、そこにはもう姿が無い。「◎×△〜」という鹿の鳴き声だけが夜空に響く。興奮は消え、かつて息子とこの裏山で遊んだことを思い出したりする。
シャワーを浴びて、眠りに就く前、日記にその出来事を万年筆で書く。
奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の
声聞く時ぞ秋は悲しき
そんな感じ。
わかりました!!
つまり、これは、モノローグなのだ!!
田口トモロヲみたいなかんじなのだ。
決して情熱大陸のナレーションみたいに読んではならない。森本レオでもない。タモリは可。サラリーマンの悲哀が出せる人に読んで欲しい。
【おまけ】
その他の回答について
1、犬…え?!犬かよ!と思ったら、となりに飼い主の親父が。「どうも〜」「お騒がせしちゃったみたいですみません」「いえいえ」「ウォン!」「こらジョン!」「いやははは。可愛いですね」など、大人の会話を交わすうちに悲しい気分はどこへやら。
2、熊…え?!熊かよ!!あわてて警察へ電話する。妻にも写メールしたりしてしまう。そのうち電話がかかってきて息子ともはなせちゃう。外はパトカーのサイレンが鳴り響き、テレビ局がやってきてインタビューされたりする。ハプニングは人を悲しみから救い出すものです。
3、キジ…え?!キジかよ!!人が見ているのに、キジはそ知らぬ顔でのしのし歩く。唖然としていたら、”ガーン”と一発の猟銃が火を噴く。わらわら山の向こうからキジ狩りご一行がやってきて、真っ青な顔をしている。「どうも・・」と言おうとするが、声に鳴らない。「なんじゃこりゃ〜!」俺、撃たれてるやん!血が血が!!救急車で運ばれて、悲しいやら痛いやら。
さて次回は・・・
【第六番:かささぎの渡せる橋におく霜の・・・】
うわ〜。また季節外れの歌だよ。どうするだよ。
(現代語訳は、中央図書「古典の学習【小倉百人一首】」宗政五十緒著」から引用しました。)
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